平井康翔(ロンドン五輪オープンウオーター日本初代表、15位)
日本のオープンウオーターのフロンティアである。日本人選手として初めて五輪に出場。オープンウオーター10キロで、積極的な泳ぎを見せて15位と健闘した。
オープンウオーターとは、水泳のマラソンである。10キロといえば、疲労度は陸上の42キロぐらいに相当する。泳力だけでなく、位置取りや駆け引き、ボディーコンタクトに耐えうる強靭なからだも求められる。
平井は明大4年生の22歳。競泳中長距離の選手だったが、3年前からオープンウオーターも始めた。夢舞台の五輪に出場するためだった。今大会はハイドパーク内の池に設置されたコースを6周するレースだった。
池の周りの人の群れの声援を受けながら、トップ集団に食らいついていった。ラスト2周でトップから遅れながら、懸命に追いかけた。執念のゴール。
「ここ(五輪)にくるのが僕の一番の目標だったので、今回は満足しています。きょうはみんな国を背負っているから、ひじ鉄などのボディーコンタクトすごくて。レース中は興奮していたから痛みを感じませんでしたが、今はあちこちが痛くなっています」
初の五輪は「感銘深かった」という。今回は出るだけでよかったけれど、「次は五輪出場だけでは満足できない。上を目指す。上って、もちろんメダル、メダル、金メダルです」
大学を卒業したら、競技に専念できる企業に進みたいという意向だ。マイナーの競技を、自身が五輪に出ることでメジャーにしたいとの使命感を抱く。
「これって総合格闘技みたいなんです。見れば、必ず好きになるはずです」
夢は、と聞けば、目元を緩めた。
「あります。僕には夢があります。このオープンウオーターを、いつか東京マラソンみたいにしたい。日本は水泳人口も、マラソン人口もいっぱいいる。僕が五輪に出れば、よしっ、おれもやってみようという人も増えてくるはずです」