立石諒(男子200メートル平泳ぎ銅メダル)

たていし・りょう  1989年、神奈川県生まれ。身長182cm、体重70kg。湘南工科大学附属高卒。現在、慶應義塾大学4年生。NECグリーンスイミングクラブ玉川所属。

競泳のメインイベントだった。男子200メートル平泳ぎ決勝。23歳の立石諒が、五輪3連覇を目指した北島康介をタッチの差でかわし、銅メダルを獲得した。

立石の喜びようといったらなかった。「よ〜し」という雄叫びがスタンドまで届いた。右手でガッツポーズ、何度も水をたたいた。隣のコースの北島から声をかけられた。「おめでとう」と。

天才肌だけど、「練習嫌い」で有名だった。だがどん底を味わう。北京五輪の代表を逃し、目標を失いかけた。2年前。移籍先が見つからず、米国に武者修行に出かけた。もう水泳をやめようと思った。「あの時が一番、つらかった」と漏らす。帰国後、高校時代の恩師や周囲の支援で水泳を続けることになった。

「感謝」という言葉をよく口にするようになった。慶應義塾大学を休学し、猛練習に明け暮れた。姿勢が変わった。努力は裏切らない。それがこの日のレースにつながった。前半抑え、後半に勝負をかけた。「ラスト50メートルの勝負になるのはわかっていた。最後は死んでもいいと思っていた」。北島を0秒06抑えての銅メダルだった。

「いろんな人のおかげです。一番は両親が支えてくれた。つらい時は周りの仲間が助けてくれた。背中を押してくれた。ああほんと、あきらめないでよかった」。表彰式で手にした銅メダル。感触を聞かれ、「重いです。いろんな思いが詰まっているので……」。つらい時期を思い出したのか、言葉を詰まらせた。 

(フォート・キシモト=写真)
【関連記事】
「自分はしなきゃいけないことがある」-北島康介
萩野公介、17歳 ロンドン五輪水泳代表
-神童スイマーの6年間
「人から言われるとカチンとくるけど」-藤原新
「最大の味方は自分だぞ」-加藤裕之
「金メダルは、非常識の延長線上にしかない」-松平康隆