鈴木聡美(女子平泳ぎで2つのメダル獲得)
21歳の夏、才能が一気に開花した。初めての五輪という大舞台。女子100メートル平泳ぎで銅メダルを獲得すると、同200メートルでは銀メダルに輝いた。個人種目で1大会2個のメダル獲得は日本女子水泳史上初の快挙だ。
その事実を記者から知らされると、鈴木聡美は目を見開いた。「え〜。そんなことやっちゃんたんですか、わたし」
福岡出身。高校時代はさほど目立った選手ではなかったけれど、山梨学院大に進んでの猛練習で力をつけた。目標タイムを切るまで延々と続く、通称「エンドレス」と呼ばれる練習では涙を流したこともある。持ち味のキック力を伸ばす基本練習の積み重ねでタイムを伸ばした。
ロンドン五輪。100メートル平泳ぎのメダルで緊張感がとれた。200メートル平泳ぎでは隣コースの女王レベッカ・ソニ(米国)について、正確なラップを刻んでいった。ソニに勝つことはできなかったが、自己ベストを大幅に更新してみせた。「(ソニと)からだ一個分近くまで追い詰めることができた。一緒に泳ぐことができて楽しかった」
高速水着時代の日本記録に並ぶ2分20秒72。「大舞台で自己記録を更新できた。メダルもとれた。自分をほめてあげたい」とはにかんだ。「しかも日本記録タイ。自分におめでとうと言いたい」とも。
表彰式後のミックスゾーン。胸には銀色に輝くメダルを下げている。何度も宝物のように右手でさわった。「今の自分の力を出し切って、まさかの銀メダルをとることができた。やっぱり山梨学院大にいってよかった。体重が減ったし、体力がついた」
これで「日本のエースだね」と言われると、故・夏目雅子さん似といわれる笑顔をこぼした。「いえいえ。エースというか、チャレンジャーでありたい」