加藤明美(ロンドン五輪女子ホッケー日本代表ディフェンダー)

かとう・あけみ 1970年、埼玉県生まれ。身長161センチ。秩父東高校(現秩父農工科高)でホッケーを始める。19歳で日本代表。天理大学卒。埼玉県飯能市のクラブチーム「H・F・C-HANNO」所属。今大会中に、「最年長オリンピック女子ホッケー選手」としてギネス・ワールド・レコードに認定される。

チームの精神的支柱だった。安田善治郎監督の言葉を借りると、「女子ホッケー界の国宝」である。天理大2年の1990年に初代表となり、キャップ(国代表戦出場)数はロンドン五輪で「387」を数えた。41歳。いつも骨惜しみせず、全力プレーを心掛けてきた。

ロンドン五輪では1次リーグで1勝1分け3敗のA組5位となり、9、10位決定戦に回った。最後の南アフリカ戦、加藤もディフェンダーとして体を張った。延長の末、2-1で逆転勝ちした。

9位となった。北京五輪が10位だったから、1つだけ順位を上げた。試合終了後、フィールドの周りをウイニングランした。加藤は笑顔だった。

「勝って終われたからよかった。一度、代表落ちしていたので、代表に戻って、五輪のピッチに立てたことがうれしい」

日本が初出場した2004年アテネ五輪から08年北京五輪、そして今大会と3大会連続の五輪出場だった。

「オリンピックの舞台で1つ勝つというのは難しいこと。前回より順位が1つ上だけど、目標は6位だったのでちょっと残念かな」

今後は? と聞けば、即答だった。「引退ですか、とよく聞かれるけど、引退はしません。ホッケーはわたしの人生ですから」

ホッケーを取り巻く環境は過酷である。学校の校舎での雑魚寝や自炊生活など、「貧乏話」ばかりが脚光を集めてきた。ようやく代表にスポンサーが付き、少しずつ環境も改善されてきた。国宝は言う。

「五輪の舞台に照準を合わせて、一体となって強化していく必要があるのじゃないか。いずれメダルを取ってほしい」

五輪でメダルをとらなければ、ホッケーの将来はないと危機感を抱いているのだ。

(フォート・キシモト=写真)
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