ゲイツ、マスク、トランプ…権力者を絡め取る手口
エプスタイン事件が前代未聞の広がりを見せている。戦後最大のスキャンダルになる可能性があり、それどころか世界秩序を大きく覆す事態になりかねない。公開されている情報から、現状を分析しようと思う。
ジェフリー・エプスタイン氏は謎の多い人物だ。数学・物理教師だったが、投資銀行ベアー・スターンズを経て1982年に自身の資産管理会社を設立。投資家として活動し、富豪の仲間入りをした。エプスタイン氏は政財界に強いパイプを持ち、ネットワークを活かして財を築いたといわれている。
問題はパイプの築き方だ。エプスタイン氏は自身が所有する邸宅や島に有力者を誘い、少女を含む女性に性的な関係を持たせていた。本人は14歳の少女を含む被害者らから2005年に告発され、司法取引の結果、児童買春1件のみを認めて禁錮刑に。さらに19年に人身売買の罪で起訴されたが、翌月には拘置所内で「自殺」している。この死亡に関しても、殺人の可能性を示唆する捜査記録が出てきている。
真相は闇の中かと思われたが、エプスタイン氏が招いた顧客リストの存在がささやかれ、25年に米議会が司法省に関連資料――通称エプスタインファイルの公開を義務づける法案を承認。公開された資料は黒塗りばかりだったが、今年1月には300万ページに及ぶ資料が公開、黒塗り部分は議員に限って所定の場所で読めるようになった。
資料からは、さまざまな有力者らの名前が見つかった。たとえばマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏。資料にはエプスタイン氏が不倫相手との密会の手助けをしたこと、ロシア人女性から性病を移されて薬を手配したことを示唆するメールの下書きがあった。本人は完全に虚偽と内容を否定しているが、エプスタイン氏による脅迫が実行される可能性があったとも言える。実際、離婚した元妻のメリンダ氏はゲイツ氏とエプスタイン氏の交際を、耐え難いものだったと回想している。
イーロン・マスク氏の名前もあった。本人は誘いを断ったと説明しており、断ったメールも見つかっている。ただ、実弟でテスラ取締役も務めるキンバル・マスク氏は、エプスタイン氏の紹介で少なくとも2人の女性と関わりを持ったことがわかる記録があった。
財界だけではない。ドナルド・トランプ大統領もエプスタイン氏とは親密だった。二人は長年の友人関係にあり、メールや写真に加え、トランプ氏のサインのある卑猥な手書きのスケッチも見つかっている。トランプ大統領自身も関係があったこと自体は認めている。
トランプ大統領は、彼の豪邸マールアラーゴで働いていた女性らをエプスタイン氏に引き抜かれたことで関係が悪化して、マールアラーゴから追放したと語っている。しかし資料からは、12年にエプスタイン氏が島ではなくマールアラーゴに行くのはどうかと尋ねるメール(差出人・受取人は黒塗り)が見つかっており、関係が継続していたことが疑われている。
エプスタイン氏と親交があったのは大統領本人だけではない。トランプ現政権の商務長官ハワード・ラトニック氏は、05年に関係を絶ったと話していたが、12年にラトニック氏とエプスタイン氏の島を訪れる計画をしていたメールが見つかっている。トランプ大統領は今年1月、次期米連邦準備理事会(FRB)議長にケビン・ウォーシュ氏を指名したが、ウォーシュ氏も、10年に開催されたクリスマスパーティーの招待客リストに名前があった。
トランプ大統領だけでなく、政権関係者までつながりがあったとすると、普通は政権が持たない。イギリスでは、前駐米大使ピーター・マンデルソン卿がエプスタイン氏に情報を売っていたことで逮捕。任命責任を負うキア・スターマー首相が窮地に立たされた。
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