アメリカとイスラエルによるイラン攻撃が始まって、約6週間(2026年4月10日時点)。ドナルド・トランプ米大統領の乱心に世界中が巻き込まれている。エネルギーを中東に依存している日本にとっても人ごとではないが、いたずらに不安を煽るのもよくない。私の見立てでは、あと半年しのげば明るい展望が見えてくるはずだ。
アメリカとイスラエルがイランの首都テヘランなどを攻撃して最高指導者のアリ・ハメネイ師を殺害したのは2月28日だった。一報を聞いて思い出したのは、03年、ジョージ・W・ブッシュ政権時代の「イラクの自由」作戦だ。
イラクは大量破壊兵器についての国連の査察を拒否していた。コリン・パウエル米国務長官はCIA(中央情報局)の情報にもとづいて、サダム・フセイン政権が化学・生物兵器を保有・製造していると国連で演説。アメリカはイラクを攻撃してフセイン大統領を拘束、のちに死刑にした。しかし、大量破壊兵器は見つからず、パウエル国務長官は自身が誤情報を信じたことを「人生最大の汚点」と表現して悔いた。
今回のイラン攻撃の背景にあったのは核兵器開発だ。イランは高濃縮ウランを大量に保有しているものの、核兵器開発はしていないとして、IAEA(国際原子力機関)による査察を段階的に制限。アメリカはイランと協議を続けていたが、3回目の協議も合意に至らず、その2日後に攻撃を開始した。
トランプ大統領は攻撃前の一般教書演説で、イランはアメリカに届くミサイルの製造に取り組んでいると主張した。しかし、アメリカの攻撃後に、IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は「核兵器を製造している証拠はない」と述べている。イラクのときと同じく、今回も言いがかりなのだ。
そそのかしたのは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相だ。24年、25年には挑発するかのようにイランを攻撃したが、イランの反撃は抑制的で、拡大はしなかった。イランを徹底的に潰したいネタニヤフ首相は、アメリカを巻き込むため、トランプ大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏と、トランプ大統領の長年の友人であるスティーブ・ウィトコフ中東担当特使を焚きつけてトランプ大統領を動かそうとした。この二人はユダヤ系で親イスラエル。トランプ大統領はユダヤ系ではないが、ユダヤロビーにうまく乗せられて攻撃に踏み切ったわけだ。
トランプ大統領に深い考えはない。テレビプロデューサー出身らしく「視聴率の取れる」テーマを見つけ、それをプレイアップする。グリーンランドやキューバも「番組」に登場するかもしれないし、中国、北朝鮮も人心を引き付ける瞬間があるかもしれない。
しかし、トランプ大統領は地政学をよくわかっていないし、内政も外交も薄っぺらなドラマとしか見ていない。1月にベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を拘束したときのように、イランもアリ・ハメネイ師をはじめとした指導者層を退場させれば親米政権が登場するだろうと軽く考えていたに違いない。だが、イラクではフセイン政権崩壊後の選挙で、親米政権ではなくイラン寄りのシーア派組織が政権を握った。結果、スンニ派の盟主であるサウジアラビアがアメリカに不信感を抱き両国間に隙間風が吹くようになった。
イランの体制は多層構造で、いくらでも替えがきく。実際、アリ・ハメネイ師への爆撃は他の高官らが近くにいるタイミングで行われたが、政府や軍は機能し続け、反体制市民たちの蜂起も転覆にいたるものではなかった。
当てが外れたトランプ大統領は、クシュナー氏が攻撃を主導したとやり玉に挙げたかと思えば、最初に軍事作戦の提案をしたのはピート・ヘグセス国防長官だと明かして開戦の責任転嫁を図っている。自分の発案でなかったとしても、身内のユダヤロビーにそそのかされて決断したのはトランプ大統領自身だ。厚顔無恥にも程がある。
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