睡眠不足は身体に悪いのはわかっている。だが、睡眠時間を確保するのが難しい。そんな人はどうすればいいのか。大手外資系企業を中心に年間1000件以上の面談を行っている産業医の武神健之さんは「4時間未満の睡眠が2週間続くと、メンタル不調になる人が多い。医学的にも、2週間が重要なポイントとなっている。多忙な人でも実践しやすい、睡眠時間を確保するコツを紹介したい」という――。
寝室のベッド
写真=iStock.com/travelism
※写真はイメージです

「4時間未満が2週間続く」とメンタル不調になる

こんにちは。産業医の武神です。蒸し暑い季節になってきましたが、皆さんは上手に眠れていますか?

不眠はメンタルヘルス不調の代表的な症状ですが、メンタル不調がなくてもうまく眠れない、もっと質の高い睡眠がしたいという気持ちは多くの人が持っているようです。実際、私の産業医面談でも睡眠に関する相談は、数多く寄せられます。

そこで今月は、私が面談している社員たちの睡眠事情をもとに、睡眠不足の影響とその対策について、お話しさせていただきます。

まず、私が15年以上にわたり産業医として働く人たちと面談してきた経験上、断言できることが1つあります。それは、「4時間も眠れない日が2週間連続」すると、睡眠負債が溜まり、つまり寝不足が蓄積し、そこから一気にメンタル不調に陥ります。

これは私の経験則ですが、生理学的な背景もあるんです。

人間の睡眠は、1サイクル約90分で構成されています。このサイクルの中で、深い眠り(ノンレム睡眠)と夢を見る浅い眠り(レム睡眠)が繰り返され、身体の回復、記憶の整理、感情の処理等が行われます。特にレム睡眠は記憶の固定や負の感情を伴う記憶の整理に重要な役割を果たします。

また、睡眠中には、脳の中だけでなく、身体の方でも、心血管系と免疫系の修復が行われます。慢性的な睡眠不足は、脳霧(ブレインフォグ※頭がボンヤリするなど)・感情不安定・判断力低下、糖尿病・癌・心疾患のリスクを上昇させると言われています。

医学的にも「2週間」はポイント

多くの場合、眠れない日があったとしても、それが数日続くと眠れます。仮に平日は十分に眠れなくても、翌日に仕事のない金曜や土曜の夜は眠れるもので、2週間連続で眠れないということは、あまり起こりません。

しかし、ペンシルバニア大学の研究では、4時間睡眠を14日間続けると、2晩の徹夜明けと同じレベルまで脳機能が低下することが実験で示されています(Van Dongen et al., 2003)。

睡眠不足が、“2週間”続くと危ないということには、どれくらい信憑性があるのでしょうか。

「DSM-5(精神疾患の診断統計マニュアル第5版)」においては、2週間の睡眠の記録が、不眠障害の診断確認のために推奨されています。つまり、この2週間という期間は睡眠障害の観察・判断期間として臨床的に認められた期間なのです。

また、うつ病(医学的には「大うつ病性障害」)の診断は、9つの症状のうち、「5つ以上の症状が2週間以上続くこと」を必須要件としており、睡眠障害はその9症状の一つに含まれています。つまり医学的には睡眠の問題が2週間続けばうつ病の診断要件の一つを満たすこととなり、私の“2週間続いたら危ない”という経験による感覚は、理に適ったものだと言えます。