長谷部誠(サッカー日本代表主将)
2014年ワールドカップ(W杯)ブラジル大会の出場を決めた翌日、サッカー日本代表の長谷部誠主将は安ど感を漂わせていた。
「自分の中では感じていないつもりでしたが、やはり(主将としての)プレッシャーはあったと思います。本当にホッとしたというのが正直な気持ちです」
もはやW杯出場は当たり前。W杯への「通過点」と見ているのだろう、オーストラリアと引き分けてのW杯出場決定にも、日本の選手たちが手放しで喜びを爆発させることはなかった。「日本人っぽいなあ、と思いました」と苦笑いを浮かべる。
「向こう(欧州)で生活していると、どういう状況であっても、選手は勝ったら大喜びするんです。でも日本人は思慮深いといえば、いい言い方ですけれど、もっと喜んでもいいんじゃないかと思います。喜ぶ時は喜ぶ、そういう柔軟性は必要かナと思います」
2008年1月、浦和レッズからドイツのウォルフスブルクに移籍し、選手としてさらに成長した。06年W杯メンバーには選ばれなかったけれど、07年からは日本代表の主力となり、10年W杯の直前に主将に指名された。
「よく“立場が人をつくる”と言いますけど」と、長谷部主将は自身の変化を説明する。
「3年前と今ではチーム内の立場が違います。あの時はできることは何もしないことだと思っていた。今はチーム内の雰囲気をつくったり、監督と選手の間に立ったり、ピッチ外のことも考える時間が多くなりました。その経験は、ひとりの人間として、自分自身を成長させてくれています」
チームの雰囲気作りでいえば、豪州戦の前は、ヨルダン、ブルガリアに連敗し、空気はよくなかった。確かにチームというものは、いい時もあれば、悪い時もある。順調な時に頑張れるのは当たり前、悪い時のキャプテンシーがより大事となる。
「思い通りにいかない時こそ、チームの真価が問われると思うんです」
試練を経て、チームはまたひとつ、たくましくなった。日本代表は、世界の強豪国が参加するコンフェデレーション杯(ブラジル)に挑む。
29歳は言う。
「真剣勝負の場で、これほど強いチームと対戦できる経験はなかなかできません。やはり自分たちのサッカーがどれだけ通用するのかということを試したい。チャレンジしてこそ見えるものがあると思うのです」
目標はずばり、「W杯優勝」である。そのためには、もっともっとチームとして成長していかなければならない。主将の言葉通り、「チャレンジ」あるのみである。