朝日健太郎(日本ビーチ文化振興協会理事長)
いつだって明朗快活。199センチの長身をひょいと屈め、朝日健太郎さんはビーチの太陽のごとき、笑顔を浮かべるのである。
「ぼくはね、21世紀のはだし文化を創りたいんです。(サッカーの)グラウンドの芝生化と同じように、学校や保育園のそれを砂漠化したい。砂漠化はちょっと語弊があるから、ビーチ化したいんですよ。そうです。夢は、芝と砂のグラウンドです」
5月の休日。東京・お台場の海浜公園は老若男女で沸き返っていた。ビーチバレーの東京オープンが開かれており、男子の西村晃一・日高裕次郎ペアや女子の石田アンジェラ・田中姿子ペアらが浜辺で躍動する。
昨年9月引退のロンドン五輪代表、朝日さんは某テレビ番組のメーンMCとして、選手らをインタビューしていた。立場が代わった。でも、相変わらずカッコいい。熱がある。
ただいま早稲田大学の大学院で勉強しながら、NPO日本ビーチ文化振興協会の理事長を務めている。簡単にいえば、海辺の通年活用とはだし文化を推進することを目標としている。もちろん、ビーチバレーの普及も入っている。
ロンドン五輪の風景が心に残る。朝日さんがプレーしたビーチバレー会場は街中のバッキンガム宮殿そばだった。
「都市型スポーツとしてビーチバレーが成熟していました。都市部で、あれだけ熱狂的な観客の前でビーチスポーツができたのがすごく印象的です。地下鉄の駅を降りてすぐ会場。ビーチバレーの可能性を感じたのです」
日本のビーチバレーの競技環境は厳しい。常設のビーチスポーツ施設は数えるほどしかない。だから、「はだし文化」を標榜する朝日さんは燃えるのだ。
「みんながはだしになれる環境をつくりたいのです。海外を見ると、公園の中にビーチコートがあったり、テニスコートの横にビーチスポーツコートがあったりするんです。そんなライフスタイルがいい」
朝日さんは熊本出身。6人制バレーで日本代表として活躍した後、2002年、この日優勝の西村選手とコンビを組んでビーチバレーに転向した。「ライジング・サン」との愛称でファンに親しまれ、白鳥勝浩選手と組んで北京五輪、ロンドン五輪に連続出場した。
37歳。3歳の長女と1歳の長男がいる。家ではよく、「はだしになって芝に下りろ! 砂場に下りろ!」という。
「僕はね、はだしになって、元気に運動するのが一番いいと思うんです。それが自分の経験として大きかった。外に出て、はだしになって、汗をかいて。解放感から心に余裕が生まれた。人間本来の姿になったと感じたんです」
ライジング・サンのコトバが熱を帯びる。ビーチスポーツの旗振り役として新たなチャレンジが始まる。