木村沙織(バレーボール女子日本代表新主将)
いつも全力投球。ロンドン五輪で銅メダルを獲得したバレーボール女子日本代表のエース、木村沙織は悔いなき競技人生を歩んできた。ロンドン五輪後には、世界最高峰のトルコリーグ「ワクフバンク・スポーツクラブ」に入団し、目いっぱいプレーした。
燃え尽き症候群みたいなものだったのだろう、木村は「引退を決意した」と言うのだ。
「もうロンドンでメダルをとらせてもらって、初めて海外でもプレーを経験させてもらって、バレーボールの経験はひと通りやらせてもらいました。自分でも十分、がんばってきたと思ったのです」
ことし1月、主将就任を告げにトルコにきた眞鍋政義監督にこう、打ち明けた。「もうバレーは辞めます」。もちろん監督から説得を受けることになった。日本に帰った監督からも、熱い電子メールをもらい続けた。
「キャプテンを受けずに終わったら、あとで後悔するのではないか。自分がキャプテンになったらどんなチームになるのか」。そんなことを考え、3月、翻意した。監督にも「よろしくお願いします」とメールを打った。
「不安もあったけど、自分でやると決めた以上は、リオデジャネイロ五輪で金メダルをとれるよう、チーム作りをいまからしていかないといけないと思っています。キャプテン、キャプテンというタイプじゃないので、今までと変わりなく、“自分らしく”できたらいいなと思います」
埼玉県八潮市出身。小学校2年生でバレーボールを始め、バレーの名門・成徳学園中学校に進学。成徳学園高校(現・下北沢成徳高校)2年の時、春高バレーで全国制覇を果たした。その年、日本代表メンバー入りし、秋のワールドカップで鮮烈デビューした。「スーパー女子高生」と呼ばれ、17歳で2004年アテネ五輪にも参加した。以後、08年北京五輪、12年ロンドン五輪に出場したほか、世界選手権、ワールドカップと幾多の大舞台で活躍してきた。
愛称が「サオリン」。天心らんまんな性格。木村の周りにはいつも、笑いがあふれている。純粋、かつ正直なのだ。木村がハタチの時、インタビューしたことがある。「きょうは世界選手権がテーマです」と言えば、「あの~。世界選手権と“世界バレー”は一緒ですか」と聞かれ、アゼンとさせられたことがある。ついでにいえば、東京ディズニーランドのアトラクションでは「スペース・マウンテン」が一番好きなそうだ。
そんなサオリンも、いつのまにか、26歳となった。しかも、新チームの新主将である。
「海外みたいといったらおかしいですが、オンとオフがはっきりして、メリハリがあって、チームワークがあるチームにしたい。明るく、楽しく。楽しいだけじゃ世界一にはなれないけど……。みんなが自分の意見をポンポンと言えるようなチームになればいいのかな、と思います」
目指すは、リオ五輪の金メダル。バレー人生初というキャプテン木村の新たなチャレンジが始まった。