松井秀喜(元大リーガー・国民栄誉賞受賞者)

まつい・ひでき
1974年、石川県根上町(現在の能美市)生まれ。星陵高校で夏の甲子園に3年連続出場。93年、讀賣巨人軍入団。96、2000、02年とMVPを3度獲得。2003年、ニューヨークヤンキース入団。09年、ワールドシリーズで日本人選手初のMVPを獲得。日米通算打率2割9分3厘、ホームラン507本。

感動的な引退セレモニー&国民栄誉賞表彰式だった。こどもの日。東京ドームが異様な熱気と興奮、涙に包まれた。

師とあおぐ元巨人監督の長嶋茂雄さんとともに白いオープンカーに乗り、グラウンド内をフェンスに沿って一周した。国民栄誉賞の表彰式では、長嶋さんの横に並んだ。おそろいの濃紺のスーツにストライプのシャツ、水玉のネクタイ姿で。

表彰式。病気の後遺症が残る長嶋さんが安倍首相から表彰状を受け取る際、松井さんはさっと寄り添い、サポートした。日本テレビの中継でゲスト解説した徳光さんが涙声で「師弟だなあ」と漏らす。同感である。泣かせるシーンだった。

松井さんは国民栄誉賞表彰式に先立ち、引退式でこう、スピーチした。

「毎日、毎日、ふたりきりで練習に付き合ってくださり、ジャイアンツの4番に必要な心と技術を教えていただきました。また、その日々が、その後の10年間、アメリカでプレーしたわたしを大きく支えてくれました。そのご恩は生涯、忘れることはありません」

この気配り、やさしさ……。そういえば、かつてこんなことがあった。4年前の師走。松井さんを東京でインタビューした際、終了時間が予定より遅くなった。松井さんは掃除係のご年配の女性を気遣い、大きな花束をさりげなく女性に渡した。「遅くまでお疲れ様です。これ、もらったものですが、よろしければ」