宇佐美里香(空手・世界選手権覇者)

うさみ・りか 
1986年、東京都出身。帝京高校、国士舘大学卒。小学校5年から空手を始める。井上派糸東流慶心会宗主・井上慶身師に師事。2007,09,10年、全日本空手道選手権大会(女子形)優勝。09,10年、国民体育大会(成形女子形)優勝。10年、世界空手道選手権大会3位。同年、アジア競技大会(女子形)優勝。

2020年夏季五輪の実施競技を目指す空手のヒロイン、宇佐美里香(国士舘大学大学院)さんは、凛としてチャーミングである。27歳。言葉には覇気が満ちる。

「オリンピックは私たちの夢舞台。(五輪競技になれば)とくに子どもたちの夢が膨らみます。もっと世界の人々ともつながる」

日本生まれの空手は、12年、16年に続き、3度目の候補入りとなった。競技人口が、188カ国・地域でざっと5000万人と多い。宇佐美さんは日本チャンピオン、アジア王者となり、昨年、世界空手道選手権(パリ)の女子個人形(かた)で優勝した。

ことし3月で引退。ただいま国士舘で空手部のコーチをしている。

「引退の時期はひとそれぞれでしょう。わたしは世界大会で優勝した時、次は自分と同じような選手を育てたいと思ったのです。オリンピック金メダリストをつくることが新たな夢となったのです」

東京都葛飾区出身。10歳の時、テレビに映った女性武道家にあこがれ、空手道場に通い出した。「血が騒いだんです。闘う女性がカッコよかった」。「組み手」と「形」をやっていたが、国士舘大学2年から「形」に専念した。

「トシを重ねると技術が上がっていきます。メンタルが強くなり、人間味が形ににじみ出てきます。礼儀作法も大事だし、空手は奥が深いのです」

既に五輪競技のテコンドーとの違いを聞けば、「こんな感じで」と手足を実際、動かしてくれた。

「テコンドーは蹴りが主体ですが、空手は打ち、蹴り、突きと全身を使った攻撃をします。いろいろできるんです」

160センチ、53キロ。五輪競技となったら、現役復帰はないのだろうか。「それはありません」と笑いだした。

「大会に出るエネルギーを子どもたちにそそぎたい。あくまで指導者として、オリンピックに出たいのです」

五輪実施競技の追加「1」枠については、5月末の国際オリンピック委員会(IOC)理事会で候補8競技から3競技程度に絞られ、最終的には9月上旬のIOC総会できまる。「ただ願うだけです」と、宇佐美さんは漏らすのである。

(松瀬 学=撮影)
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