アルベルト・ザッケローニ(サッカー日本代表監督)
温厚そうで紳士然としている。冗談も口にする。でも目の奥は笑っていない。こわい時がある。
勝負師なのだ。30歳でイタリアのチェゼナティコというクラブの監督に就任。以降、ウディネーゼ、ACミラン、インテル・ミラノ、ユベントスなどのクラブで指揮をとる。
2010年8月、日本代表の監督となった。それから2年10カ月。6月4日のワールドカップ(W杯)ブラジル大会のアジア最終予選でオーストラリアと引き分け、5大会連続5回目の本大会出場を決めた。
厳しい試合だった。超満員6万2千の観客の前で息詰まる攻防が続く。終了直前に1点を失い、ロスタイムで幸運なハンドをもらい、本田圭佑が同点PKを蹴り込んだ。
ザッケローニ監督は苦笑いをつくった。
「はっきり言って、(この試合で)10歳はトシをとったかなと思う。それでも非常にうれしい。今日は試合の内容もよかった」
試合後、ピッチでは選手の手で宙に舞った。スタッフと並んでピッチを一周した。大歓声、あたたかい拍手が送られた。
「日本代表の監督をやったあと、どこの国にいこうか、そういうことも考える。ただ日本の長所や素晴らしいことを知って、他のところに目を向けるのは難しい。ピッチを一周している時、実はテクニカルスタッフとそういう話をしたんだ。これだけのサポーターに囲まれている風景を考えると、ちょっと次に別の国にいくのは難しいなと……」