歴代最高との呼び声も高い現在のサッカー日本代表。なぜ短期間で飛躍的に強くなったのか。人材マネジメントの専門家がザッケローニ監督のチームづくりの秘密に迫った。

コミュニケーションは選手によって変えよ

Alberto Zaccheroni
(アルベルト・ザッケローニ)
1953年、イタリア生まれ。30歳でチェゼナティコの監督に就任後、ACミラン、インテル、ユヴェントスなどイタリア名門クラブの監督を歴任。ACミラン時代にはリーグ優勝を経験。2010年、日本代表監督に就任。AFCアジアカップで優勝に導いた。母国でホテルを所有し、経営者の顔を併せ持つ。
──まず日本代表のチームワークについてお聞かせください。年齢、経験、性格など、多種多様な選手たちを集め、うまくまとめておられます。どんな工夫をされていますか。

工夫といえるほどのものはありません。海外で活躍している選手といっても日本人であることに変わりはありませんし、日本に帰ってきたときには日本のやり方を重んじてくれます。海外に出たことで、日本のサッカーの優れた点を改めて実感しているということも大きいでしょう。常に強い「個」であることが要求される海外と違い、チームワーク重視という日本のやり方を楽しんでいるようにも思えます。

──よいチームワークを醸成する秘訣はあるのでしょうか。

それぞれの選手の個性や性格を正確に把握することが重要です。チームをマネジメントしていくうえで、チーム全体に適用するルールはありますが、コミュニケーションの取り方は選手によって変えるべきです。サッカーはチームスポーツですが、個で戦う場面も非常に多い。チームのマネジメントにおいても同じで、チームに出す情報と、選手一人ひとりに出す情報を使い分けています。これは日本だけでなく世界共通ですが、チームに対する方針が明確でぶれないこと、それに即して個別に、「君はこうすべきだ」「こうすべきではない」という技術的な指導をしてくれる監督を選手は望んでいます。

逆に、監督が口にすべきではないこともあります。プロ選手たる者、自分をいくらで売り込むか、いかによい条件で契約してもらうかを、いつも考えています。そうした話はチームのフロントに任せておけばよくて、監督が口をはさむべきではありません。