三宅宏実(東京五輪招致アンバサダー)
2020年夏季五輪の招致レースが大詰めを迎えつつある。今回の東京の招致活動の特徴は、アスリートが前面に出ていることである。招致アンバサダーを務めるロンドン五輪女子重量挙げの銀メダリスト、三宅宏実選手(いちごグループホールディングス所属)もその一人。
「自国開催だったら、日本の人たちの心の中にオリンピックが必ず残る。オリンピックのために頑張っている選手たちの姿を是非、生で見てほしい」
三宅選手の父の義行さんは、1968年メキシコ五輪の銀メダリスト。伯父の義信さんは64年東京五輪、68年メキシコ五輪の金メダリストである。それだけに、家族の20年五輪招致にかける思いも強い。
三宅選手は招致委のアスリート委員会のメンバーでもある。6月に開かれた同委員会では、今後の招致活動プランのほか、「なぜ東京なのか」「どうしたら招致が成功するのか」も話し合った。会見で、同選手は漏らした。
「会議の内容がすごく濃くて……。なぜ東京なのかをアスリート一人ひとりが自覚することによって、いろんな人にメッセージを発信していけるんじゃないかと感じました」
会見後、三宅選手を追いかけて、聞いた。「なぜ東京なのですか?」と。
「いろんな要素があるんですけど、やっぱり東京ではオリンピックを見たことがないので。それに2020年に東京でやれば、何かが変わると思うんです。何事も時代とともに変わっていく。東京には、これまで(の五輪開催地)と違うものがある。再生というか、東京を(時代と共に)オリンピックが変わるきっかけにしたいのです」
何かと不安定な世の中である。そんな不確実な時代にこそ、「安全・安心・確実」な五輪を東京で開く。五輪の価値を高め、さらに次世代につないでいくことになる。
例えば、女性スポーツ進出のため、日本がアジアや世界をリードしていく契機に東京五輪を位置づけることもできよう。
「そうですね。最近、女性のアスリートが増えてきて、比較的、強くなってきています。そんな流れの中、女性が(社会を)引っ張っていったり、出ていったりするのはカッコいいなあと思います」
WHY(なぜ)東京なのか。招致成功を願い、27歳の五輪銀メダリストは人々にメッセージを伝えていくのである。