桜庭吉彦(ラグビー19年W杯アンバサダー)
いわば2019年に日本で開催されるラグビー・ワールドカップ(W杯)PR活動の推進役である。このほど、大畑大介や元木由記雄ら5人と共に「19年W杯アンバサダー」に就任した。46歳の桜庭吉彦はいつも通り、人情味あふれる語り口でいうのだ。
「腰が痛いとか、ひざが痛いとか言いながら、ラグビーをやっている40歳以上のラガーマンがたくさんいます。そういったわたしの同世代、あるいは年上のラグビー経験者の方が、ラグビーのグラウンドに戻ってくれるような役割を果たします」
桜庭は新日鉄釜石のV7を知る、日本代表キャップ(国代表戦出場)「43」の名ロックだった。猛タックル、突進……。からだを張るプレーは見る者の胸をアツくさせた。
当時、人気の日本選手権や早明戦では、国立競技場も満員の観客でにぎわっていた。その人気は下降線をたどり、今年2月の日本選手権決勝の観客も約1万4千人止まりだった。19年W杯に向け、ラグビー人気回復は大きな課題となっている。
「国立に観衆が入っていたことを知る年代が40歳以上だと思う。そういった潜在的なラグビー熱を持っている方を(ラグビー場に)呼び戻して、周りにいる子どもやお孫さんにラグビー熱を広げていってくれれば、もっと盛り上がっていくのではないかと思います。熱は完全に消えたわけではありません。ちょっと風を送れば、もう一度(火を)噴くものもあるでしょう」
W杯アンバサダーは8月から、全国47都道府県を順次訪れ、W杯やラグビーの魅力を伝えていくことになる。
人と酒を愛する秋田出身の桜庭は笑いながら言葉をつづける。
「各地を訪ね、一緒にラグビーをするだけでなく、観るだけでもイイ。一緒に飲むだけでもいいと思います。酒場めぐり、名酒めぐりを通じて、W杯のよさを伝えるのです」
ラグビーの名門の秋田工業高校から、新日鉄釜石製鉄所に入社した。猛練習で鳴らし、クラブチームとなった「釜石シーウェイブス」でもプレーした。新日鉄住金釜石製鉄所勤務。現在、同クラブのディビジョンマネジャーを務める。
実は釜石は19年W杯の試合会場を誘致しようとしている。
「ラグビーをする人に限らず、大会のボランティアなども含め、(W杯は)地域がひとつになれるチャンスだと思っています。釜石は小さいがゆえに、まとまりやすい環境にある。街の文化や歴史など、(開催地の)オリジナリティは大事だと思います」
モットーが「一生懸命」。武骨な東北人が釜石のため、さらには19年W杯日本大会のため、全国を回っていく。酒場も。