瀬川智広(ラグビー7人制日本男子代表ヘッドコーチ)

せがわ・ともひろ
1970年、兵庫県生まれ。大体大4年時に関西学生代表に選出。1993年、東芝に入社し、スクラムハーフとして活躍。2000年、東芝府中ラグビー部コーチに就任。2007年より東芝ブレイブルーパス監督。在任中にトップリーグシーズン2連覇(08-09,09-10)。2010年、監督を退任。2012年4月から、男子7人制日本代表の新ヘッドコーチに就任。

春の嵐が吹き荒れた3月某日。7人制ラグビーの日本代表男子の練習が、東京・辰巳の森ラグビー場で行われた。小柄な瀬川智広ヘッドコーチ(HC)は笛を吹きながら、駆けまわる。両手をたたき、声を張り上げる。

「サポートだ!」

「ナイス!ナイス!」

いつも全力投球。HCとして、親身かつ地道にチーム強化に取り組んできた。試合時間の短い7人制ラグビーならではか、練習でもメリハリを意識している。

「セブンズ(7人制ラグビー)で大事なことは“常に楽しく”です。厳しいことを楽しくやって、チームになっていくのが一番だと思います。明るく、楽しく、元気よく、それで最後に勝つ。“やるときはやるぞ”という集団になればいいんです」

努力の人である。兵庫県出身。ポジションがスクラムハーフ。明石西高校から大阪体育大学に進み、「誰よりも一所懸命に練習をやる姿勢」(坂田好弘監督、当時)が評価されて2年でレギュラーに抜てきされた。

卒業後、名門・東芝に進み、選手として日本選手権3連覇を果たした。引退後、コーチを経て、2007年、東芝の監督に就任した。自身の経験から、「一所懸命にやる選手を信じて見守ること」を実践してきた。

昨年4月、7人制ラグビーの日本代表男子のHCに就いた。トップリーグのある15人制ラグビーと比べると、7人制ラグビーの強化体制は脆弱だった。だが2016年リオデジャネイロ五輪で正式競技になったこともあり、瀬川HCは丁寧に粘り強く周囲を説得してきた。「ラグビー界全体で同じ方向を向けば、もっと代表が強くなる可能性があります」と期待する。

目標が「オリンピック金メダル」。そのためには長い目でみた若手選手の発掘・育成、企業チームのサポートが必要だろう。香港セブンズ(22日~24日)、東京セブンズ(30日、31日)と大事な国際大会が続く。

「このシリーズが世界への第一歩となる」と、瀬川HCは言う。コンセプトは「走り勝つ」こと。「でも、ただ単純に走り合いをすれば、世界のスピードランナーに勝てないと思います。だから倒れても早く立ち上がったり、ポジションについたり。短い距離の瞬間スピードと継続プレーで勝負したい」

42歳の瀬川HCはチームを「ファミリー」と表現する。7人制ラグビーに悲壮感は似合わない。明るく、楽しく、元気よく、セブンズ・ファミリーは五輪ロードを走るのだ。

(松瀬 学=撮影)
【関連記事】
「おぼれそうになりながら必死で前に進んでいる」-中村知春
「満腹感は、ないです」-真壁伸弥
「前の年のチームに追いつけ、追い越せです」-中村亮土
「勇気なくして栄光なし」-堀江翔太
「泥臭く、ひたむきに」-泉 敬