ダブルインカムを生かして高額のペアローンを組み、高級物件を手に入れたパワーカップルが離婚する場合、どんな問題が起きるのか。離婚・男女問題に詳しい弁護士の堀井亜生さんは「ペアローンには思わぬ落とし穴がある。ペアローンがあると、離婚が難しくなることが多い」という――。
※本原稿で挙げる事例は、実際にあった事例を守秘義務とプライバシーに配慮して修正したものです。また、ローン等の金額も、実際の事例からは変更しています。
「夫の不倫が許せないので離婚したい」
会社員のA子さん(33歳)が、離婚したいということで法律相談にいらっしゃいました。
理由は会社員の夫(34歳)の不倫です。
A子さんは夫の不倫にとても怒っていて、家では毎日けんかが絶えない状態だということでした。夫は謝ってはいますが、許せないので、離婚して財産分与と慰謝料をもらいたい。そして相手の女性も訴えて、こちらからも慰謝料をもらい、謝罪もさせたいという希望でした。
探偵に依頼して撮影した夫と女性がホテルに入っていく写真など、不倫の証拠はきちんと揃っています。
マンションのローンが壁に
次に財産分与のシミュレーションをするために、夫婦の収入と財産がわかる資料を持参してもらいました。
すると、A子さん夫妻の資産状況について、以下のようなことがわかりました。
夫の年収は800万円、A子さんの年収は500万円。
主な財産は持ち家のマンションと銀行預金と自動車。
問題はマンションでした。2年前に約9000万円のマンションを35年ローンで購入しているのですが、夫婦でペアローンを組んでいました。
ペアローンとは、夫婦の両方が主債務者となって契約をするローンです。さらにお互いに連帯保証人になるため、夫婦の両方に返済の義務があり、片方の返済が滞った場合、もう一人にただちに支払いの請求が行きます。
夫婦が200万円ずつ、計400万円の頭金を入れていて、月々の返済額は夫が月約14万円、妻が約8万円です。
マンションの持ち分は、返済額に応じて、夫が13分の8、A子さんが13分の5になっています。
A子さん夫妻のペアローンの概要を把握した私は、「この状況では、離婚は難しいかもしれません」とA子さんにお伝えしました。