五郎丸 歩(ラグビー日本代表フルバック)
ラグビーのトップリーグ最終戦(1月18日・秩父宮ラグビー場)、ヤマハ発動機は終了直前のペナルティーゴール(PG)でサントリーに敗れた。プレーオフ(4強)進出を逃し、スタンドの応援団にあいさつにいく。そこには『五郎丸』と描かれた大漁旗が青空にはためいていた。
日本代表に定着したヤマハのフルバック(FB)、五郎丸歩は意外と淡々としていた。
「チャレンジャーらしい戦いができました。そんなに悔いはありません。チームとして、やりきった。力は出し切りました」
この日も難しい位置から2本、ゴールキックを蹴り込んだ。だが、勝負どころのゴールは失敗した。もしも、入っていれば……。
「入っていれば、ラクな勝利になっていたかもしれません。とくに緊張もせず、ふだん通りに蹴ったんですが……。あの1本は、悔やまれるキックですね」
FBとして、円熟の境地に達した。正確なゴールキックを蹴り続け、今シーズンは167得点をマークした。3年連続のシーズン得点王はニコラス・ライアン(サントリー)に阻まれたものの、安定感は増した。
ヤマハの「活動縮小」によるチーム存続の危機を乗り越えたあと、トップリーグ成績を「11位」から「8位」「6位」、今季「5位」と着実に上げてきた。五郎丸の成長は、チームの躍進と共にあったといってもいい。
「年々、個人としても、チームとしても、調子の浮き沈みが少なくなってきています。ただ強くなってきているけれど、トップ4には入ることができませんでした。チーム全体としては若いので、まだまだ成長できる部分がたくさんあると思います」
もう日本代表でも欠かせない中心選手となった。昨年、金星を挙げたウェールズ代表戦、世界王者のニュージーランド代表戦でも、秋の欧州遠征でも、堂々とプレーした。キックだけでなく、ランプレーも、ディフェンスもよくなっている。
安定感が増したヒミツは? と聞けば、27歳は愉快そうに笑った。
「1年中、休みなく、ラグビーをしているからじゃないですか」
チームリーダーとして、チームメイトにも声をかけるようになった。日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチに倣い、練習では若手をほめるようになったそうだ。
「なかなか、日本人はプレーを褒めないんですよ。でもエディーさんは、いいところはいいとすぐ、言ってくれる。それって、いいなあって。だから、ぼくも練習中、いいプレーは褒めるようになりました」
福岡市出身。小学校の時はサッカーで福岡市選抜に選ばれたこともある。ラグビーでは佐賀工業高校、早稲田大学で活躍し、日本代表のキャップ(国代表戦出場)数は「33」を数える。185cm、100kg。日本人離れしたスケールの大きなプレーを持ち味とし、恵まれたからだを生かした豪快なランニング、正確なロングキックでチームに勢いをつける。
モットーが『激』。
「ラグビープレーヤーとして、激しくありたいのです」
目標がヤマハの優勝とワールドカップ(W杯)出場。いつも沈着冷静な風情ながら、闘志は煮えたぎっているのである。