福岡堅樹(ラグビー日本代表ウイング)
国内唯一のラグビー専門月刊誌の表紙を2カ月続けて飾った。日本待望の「スピード・スター」である。いまや、ラグビー界では、ちょっとした「時の人」か。
福岡堅樹。21歳。全国大学選手権では、筑波大のエース・ウイング(WTB)として活躍してきた。その表紙の月刊誌を見せられると、どこか幼さの残る顔を崩した。
「マジッすか。すごい。恐縮です。ありがとうございます」
50mを5秒台で走る。2013年春、日本代表に抜てきされると、俊足と強い足腰を生かして、トライをとりまくった。175cm、83kg。秋の欧州遠征のスコットランド戦では、なんと2トライをマークした。
自分のスピードで相手防御を抜ける間合いとタイミングをつかんだようだ。筑波大に戻っても、天才的な新人SO(スタンド・オフ)の山沢拓也のパス回しからビューティフルなトライを重ねてきた。ふたりのスピードと切れ味が凄まじい。
「シーズンを戦ってきて、山沢もだいぶ(相手を)抜けるタイミングがわかってきたようです。自分はボールをもらって、ただ走っていくだけなので。ぼくは外からリードできるよう、声を出すことを意識しています」
福岡県出身。5歳の時、ラグビーのジュニアスクールに入り、福岡県立福岡高校の時には全国大会に出場した。大学の医学部を目指すも失敗し、一浪のあとの2012年、筑波大の情報学群に合格した。筑波大の躍進の原動力となった。
高校時代、両ひざのじん帯を損傷していたそうで、一浪したことがラグビー選手としては幸いした。こう、漏らしたことがある。
「浪人中に(両ひざの)けがをしっかり治すことができました。また、新しくラグビーに取り組むという意味でもよかったのかな、と思います。ラグビーをやりたいなという気持ちが強くなりました」
スピードにまつわる逸話は多い。例えば、高校時代、ステップを切ったら、あまりに鋭かったため、足の裏の皮がはげたという。「暑くて、皮がふやけていたので、ステップを切った時、べりっといった」と笑う。
好きなコトバが、故スティーブ・ジョブズ氏の「Stay hungry, Stay foolish.(ハングリーであれ、愚か者であれ)」である。そのココロは。
「やっぱり、成長していくためには、向上心という部分と、謙虚な気持ちを持っていないといけないということです。いつまでも新鮮な気持ちで、何事にも挑戦していきたい」
新年1月2日。筑波大は全国大学選手権準決勝で早大に敗れた。福岡もまた、相手の厳しいマークに力を出せなかった。「何もさせてもらえませんでした」とうなだれる。
「もっと、自分からボールに絡んでいかないといけませんね。まだまだ、です」
午年の2014年。日本ラグビー界のホープが「世界」に駆ける。駿馬のごとく。