2025年3月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお送りします。仕事術・スキル部門の第5位は――。
▼第1位 「わかりました」を"I understood."と言ったらブチギレられた…通訳者が教える「中学英語」の意外な落とし穴
▼第2位 これほど「壁打ち」に最適な場所はなかった…「喫煙ルームと飲み会」が消滅した日本の企業で起きていること
▼第3位 「コミュ力が高い人」はサラッと使っている…「たしかに」でも「なるほど」でもない"最強の相槌フレーズ"
▼第4位 「なぜ日本車ばかり売れるんだ?」突然絡んできた米国人が思わず感嘆…医師・和田秀樹の"絶妙な切り返し"
▼第5位 寝る前に布団の中で「1分間」考えるだけ…脳科学者が教える「本当に頭のいい人」が毎晩やっていること
※本稿は、井ノ口馨『アイドリング脳 ひらめきの謎を解き明かす』(幻冬舎)の一部を抜粋・再編集したものです。
40億年の進化のたまもの
2023年は「生成AI元年」とよばれるほど、ChatGPTをはじめとした生成AI(GenerativeAI)が世間を賑わせました。
AI(ArtificialIntelligence人工知能)とは、人間の脳が行う思考や学習を再現するコンピュータープログラムやシステムです。人工知能が飛躍的に進歩し、画像診断や音声アシスタントなど、人々の仕事や生活に影響を及ぼすようになってきています。学生や若い人がこれからの時代を生きていく上で、AIと共に生きる、もしくはAIを使いこなすことは必須でしょう。
AIは確かにすごい。実は僕も、AIを活用したアイドリング脳研究を始めたところです。日々の実験において、マウスの脳を観察して得られるデータは、非常に膨大で複雑で、とても人間には解析しきれません。人間には認知できなくても、AIなら何かを見つけられる可能性があると考え、大型の研究プロジェクトを動かしているのです(注1)。
ただし、あえて言いますが、脳のほうがもっとすごい!
僕の研究分野で言えば、脳は、数少ないデータ(経験)を基に、正解らしい答えを一瞬で導き出す能力があります。それは直観、といわれるものです。
脳は、意思を持って自ら考え、何かを新しく創造することもできます。おそらくAIにはできないことです。
能力のわりに、超省エネ
さらに脳は、とんでもなく省エネです。人間の脳と同じ機能を持つAIを動かそうと思ったら、人口50万人くらいの都市の総電力くらいのエネルギーが必要になるのではないでしょうか。それが僕たちのこの頭の中に収まっているのです。
このように、直観・創造性があり、少量のデータとエネルギーで駆動できる脳は、やはりすごい。
どうしてそんなことが可能なのか? 簡単に言い表すことはできませんが、1つ確実に言えるのは、脳は、いえ脳に限らず今ある生命体は、40億年かけて開発されてきた進化のたまものだということです。
人間が科学をはじめたのはたった数百年前です。それにひきかえ、生命は、40億年かけてこつこつと部品である分子の一つ一つを選抜し、細胞を、生命を、つくりあげてきました。まだまだ分からないことだらけ、謎も可能性もいっぱい。それを究明しようとしているのが生命科学です。そして、その生命科学の最後の大きなフロンティアといわれているのが脳科学、もう少し広範な言葉にするなら神経科学(英語で言うと、ニューロサイエンス)なのです。