※本稿は、瀧靖之『本当はすごい早生まれ』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
早生まれの子の学力は低い?
早生まれの子は、不利。
そんな風に思われている方も多いと思います。実際にそれを証明するような研究もあります。2020年に東京大学大学院の山口慎太郎教授が発表した論文は、「早生まれは不利」ということを裏づけるような内容であったため、多くのメディアで話題になりました(※1)。そのため、早生まれが負うとされるハンディキャップに、改めて関心が集まることになったのです。
※1 Shintaro Yamaguchi, et al. Month-of-Birth Effects on Skills and Skill Formation, June 2023, Labour Economics, 84(4).
もしかしたら、その論文を知っていて、本書を手に取った方もいるかもしれませんね。
ただ、論文の読み方にはコツがいるというのも事実です。実際、この論文に対しては、次の部分に注目した方が多かったように思います。
・学年が上がれば学力の差は縮まるが、差は残る。
・進学した高校の平均偏差値は、3月生まれは4月の遅生まれの子よりも4.5ポイント低い。
確かに、これらの内容に注目すれば、「早生まれの子の学力は低い」ということが証明されてしまったように思えます。
「早生まれ」と「遅生まれ」の違い
では早生まれの子は生まれつき、学力が低いのでしょうか?
ちょっと落ち着いて考えてみてみれば、そんなことはないということがわかります。4月1日が予定日だった子が、1日遅れて4月2日生まれになったことで、学力が大幅に上がるということはないからです。脳科学の観点からいえば、たった1日の違いで、その子が持つ能力が変わるということはありません。
では、何に違いがあるのか。
それは「早生まれの環境」です。
この環境の違いが「早生まれ」と「遅生まれ」に差をつくっているのです。
では、どのような環境が整えば、「早生まれ」の子を伸ばすことができるのでしょうか。実は山口氏の論文は、この点にこそ注目してもらいたいものなのです。ここに、本書を通じて皆さんにお伝えしていく「早生まれ」を伸ばすヒントがあるからです。