塾に通わせて勉強ばかりする“代償”
ご自身が早生まれの場合は、これまで興味を持って取り組んできたことなどを振り返り、どんなことが現在の自分の能力を押し上げたのかを振り返ってみて下さい。親から「勉強しなさい!」といわれながらも、夢中になって続けたバンド活動や部活動が、今のあなたの能力をつくり上げたベースとなっているかもしれません。
調査では、「早生まれの子は、遅生まれの子よりも、長い時間勉強している」ことがわかっています。「塾に通う割合が高い」ということは、親が勉強での遅れを心配して、通わせているということでしょう。
一方で、その他の時間が削られていることも見て取れます。
外遊び、スポーツ、音楽、絵画などの習い事は、非認知能力を伸ばしてくれます。
ピアノ教室に通うかわりに学習塾に所属することは、目の前の成績を上げることにつながるかもしれません。しかし、将来的な成績の伸びを支えてくれるのは、音楽で培う非認知能力かもしれないのです。音楽と学力については、本書の第3章で詳しくご説明します。
運動は脳を育てることにつながる
外遊びやスポーツ系の習い事は、非認知能力を伸ばすだけではありません。意外に思われるかもしれませんが、運動は直接、脳を成長させることがわかっています。
運動をすると、記憶を担当する脳の中の「海馬」の体積が増えるという調査結果があります(※2)。
※2 Laura Chaddock, et al. A neuroimaging investigation of the association between aerobic fitness, hippocampal volume, and memory performance in preadolescent children. Brain Research, 2010 Oct 28:1358:172-83.
左右に一対あり、タツノオトシゴの形に似ているために、その別名である「海馬」と命名されました。かわいい名前ですが、短期記憶を長期記憶に変えてくれる超優秀な脳の領域です。
つまり海馬が発達していれば、それだけ暗記作業が楽になると考えられます。体を鍛えることで海馬が育つのであれば、特に幼い頃の運動は、そのまま脳を育てることにつながります。
早生まれのお子さんの成績を気にして塾探しをする前に、一度「この子を伸ばす方法や習い事が、他にあるのではないか」と考えてみることは無駄ではありません。もしかすると塾に行くよりも、公園を親子で走り回ったり、スポーツをする方が子どもの脳が育つかもしれないのです。