5月29日、東武マーケティング(旧・東武カードビジネス)が新しい東武カードの発行を開始する。誕生から40年、東武百貨店や東武鉄道のユーザーを中心に長年親しまれてきた同カードが、デザイン性、利便性ともに飛躍的に進化。ポイント還元率の大幅アップやスマートフォン保険の自動付帯なども実施し、新規顧客の獲得を狙う。刷新の背景や戦略、新カードの魅力などについて、代表取締役社長の鈴木熊野氏に聞いた。

大幅刷新で「東武線沿線最強のサブカード」に

――まずは新しい東武カードの概要についてお聞かせください。

【鈴木】東武カードは1983年、東武百貨店のハウスカードとして発行を開始しました。以来40年以上、大きな信頼をいただいてきましたが、今回「スタイリッシュ&パワフル」をテーマに、デザインや機能を大幅に刷新しました。同時に「東武カードアプリ」もリリースし、利便性をさらに向上させます。

新しいカードは「スタンダード」(年会費税込1,320円)と「ゴールド」(同7,920円)の二つのグレードが中心になります。いずれのカードも高水準のポイント還元率を実現しているほか、スマートフォンによるタッチ決済にも対応しています。便利に使えてお買い物でも通勤・通学でもどんどんポイントがたまる、東武沿線最強のサブカードとしてご愛用いただけるものと思っています。

――テーマは「スタイリッシュ&パワフル」とのことですが、特にどんな点にこだわって開発されたのでしょうか。

【鈴木】テーマには「デザインはスタイリッシュに、商品性はパワフルに」という意図を込めています。まずデザインですが、新しいカードは縦型とし、右側に東京スカイツリーを、カードの挿入方向を示す形で配置しました。

カラーは、スタンダードカードは若い世代に人気のスモーキーなブルー、ゴールドカードは重厚感と明るさを兼ね備えたグラデーション仕様にしています。特にゴールドについては、既存のカードにはない色合いを目指して10回以上も試作を重ねました。ゴールドカードで「TOBU」の文字に採用している埋め込み型ホログラムも、他社のカードにはない唯一無二の特徴です。

新しい東武カードのデザイン

©TOKYO-SKYTREE

商品性では、ポイント還元率の高さや、ゴールドカードに自動でついてくるオリジナルスマートフォン保険の利便性を「パワフル」という言葉で表現しました。この保険は若者世代のニーズに応えて独自につくり上げたもので、画面割れや水濡れ、自然故障について最大50,000円の補償を提供する充実の内容となっています。

※1:基本ポイントは明細ごとに計算されます。また、一部基本ポイント率が適用されない施設、商品・サービスがございます。
※2:合計ポイントは、提示と東武カード決済の合算値であり、最大料率を表記しています。なお、提示によるポイントと東武カード決済によるポイントの付与タイミングは異なり、提示でたまるポイントが付与されるお支払い方法は施設によって異なります。
※3:PASMOアプリに登録した東武カード決済かつ東武鉄道を発駅とした場合。
※4:TOBU POINTアプリに東武カードとモバイルのPASMOを登録し、月間利用額が5,000円以上の場合に適用される追加ポイント(10%)を含めた最大の還元率。
※上記は一例です。詳細はサービス開始日以降の公式ホームページ(https://www.tobucard.jp/)をご覧ください。
※PASMOは、株式会社パスモの登録商標です。
※PASMOオートチャージサービスは、株式会社パスモが提供するサービスです。

若い世代の顧客獲得を目指して開発に着手

鈴木 熊野氏
鈴木 熊野氏(すずき・ゆうや)
東武マーケティング株式会社 代表取締役社長
東武鉄道株式会社 執行役員を経て、2022年より東武カードビジネス株式会社の代表取締役に就任。2025年4月の社名変更により、現・東武マーケティング株式会社の代表取締役社長として現職に至る。

――新カードの発行に至った背景や開発の経緯を教えてください。

【鈴木】東武カードは近年、会員の平均年齢が65歳に達するなど高齢化が進み、会員規模も縮小傾向が続いていました。会員は50〜70代が中心で、30代は全体の5%弱、20代は2%弱で、10年後や20年後を考えると危機感を抱かざるを得ない状況でした。

そこで、この状況を脱却し起死回生を図らなくてはと、6年ほど前に新たなカードの開発を検討し始めたのです。まずは、クレジットカードのシステムをこれ以上自前で維持し続けるのは資金的に難しいという判断から、JCBが保有するシステムや業務基盤を活用する形に変更しました。

同時に、若い世代にとっても魅力あるカードを目指して、ポイント還元率の引き上げにも着手しました。ポイントは百貨店や鉄道などを含む東武グループ全体に共通するサービスですが、各社との連携や調整は非常にスムーズに進みました。これも、よりよいカードを目指して関係者全員が積極的に取り組んでくれたおかげです。

“鎖国戦略”で高いポイント還元率を実現

――獲得できるポイントについて、例えば東武線沿線に住んでいるユーザーは1年間でどの程度たまるのでしょうか。

【鈴木】東武東上線の沿線であるふじみ野市にお住まいでゴールドカードをお持ちの場合、下記のシミュレーションでは年間38,596ポイントがたまる計算になります。たまったポイントは加盟店で1ポイント=1円として使えるので、年会費を差し引いても非常にお得感があるのではと思います。

東武カードゴールドシミュレーション

特にモバイルのPASMO定期券においては、東武鉄道を発駅としていればポイント還元の対象になりますので、都心に通勤されているビジネスパーソンにとってはそれだけでゴールドカードを持つ価値があると考えています。ポイントは提示とお支払いのダブルで還元されるため、東武百貨店や東武ストアなど、東武線沿線でのお買い物が多い方にはぜひ普段使いのカードとして1枚持っていただければと思います。

また、ゴールドカードをお持ちの方は東武百貨店に新設するサロンもご利用いただけます。ドリンクサービスがありスマホの充電も可能なカフェ空間にする予定で、例えば東武宇都宮百貨店では、日光金谷ホテルの協力を得てレトロな雰囲気を楽しめるサロンをつくる計画を進めています。

――なぜこれほど高い還元率を実現できたのでしょうか。

【鈴木】若い顧客層の獲得に向けて、ポイント還元率の大幅アップは必須の施策でした。新しい東武カードの還元率は、エントリーモデルであるスタンダードカードでも定期券(モバイルのPASMO)で5%とかなり高水準です。

なぜこの数字を実現できたか。それは、当社がポイントの利用先を東武グループ内に限定しているからです。お客様の使い勝手を考えれば利用先を解放するのがベストではありますが、それでも私たちはかなり初期の段階で“鎖国戦略”をとろうと決めていました。

当グループにとってポイントは販促活動の一環ですから、その利用先を解放すると販促に投資した分が外部に流出してしまうことになります。それでは投資にならないので、あえて鎖国を貫くことで思い切った還元をしていく方向に舵を切りました。これが功を奏し、今回ターゲット層とする若い世代からは還元率を高く評価されています。

旧来の枠を超えて新たなステージへ

――カードの刷新に際してぶつかった壁などありましたら教えてください。

【鈴木】正直、そうした壁を感じることはありませんでした。確かに、組織の中で新しいことをしようとする際には困難や苦労を感じる人も多いでしょう。でも、それは変革を性急に進めようとしているからではないでしょうか。

先ほども申し上げましたが、新しい東武カードは発案から実現までに6年かかりました。ここから実感したのは、いかに大きな変革も時間をかけてしっかり準備すれば実現できるということです。高い理想を掲げながらも、順を追ってひとつずつ準備を進めていく。こうした姿勢で挑めば、どんなに高い壁も乗り越えられるのではないかと思います。

カード刷新の際、私はまず組織内に揺らぎを与えるところから始めました。誰だって歴史あるものや慣れ親しんだものを急に変えたくはないですから、色々な人に「このままでいいんですか」「こういうことをやってみませんか」と投げかけるところから始めたのです。そのうちに疑問や興味を抱く人が増えてきて、それが次の段階に進む足がかりになりました。

ガチガチに固まっているものをいきなり壊してつくり直すのは難しいものです。だったら、揺らぎを与えながら時間をかけて溶かせばいい。壊すのではなく溶かす、これはモノにもビジネスにも通用する手法じゃないかなと思います。

――今後、会社や新カードをどう進化させていこうとお考えでしょうか。

【鈴木】この4月、当社は社名を「東武カードビジネス」から「東武マーケティング」に変更しました。今後はクレジット事業の枠を超え、グループのマーケティング活動支援にも取り組んでいく方針です。既存のお客様はもちろん新たに若い層も取り込んで顧客基盤をつくり、デジタルマーケティングの強化による収益拡大を実現していきます。

会社ロゴ

新しい東武カードは2025年度には47.5万枚、2030年には100万枚の発行を目指しています。私たちの強みは、東武線沿線のお客様と濃いコミュニケーションを築くことができる点にあります。この武器を生かしながら、顧客の若返りやマーケティング活動に成功した事例となるべく着実に歩んでいきます。

発行開始日の5月29日には、初年度の年会費無料やポイント率アップなどのキャンペーンもスタートします。鉄道から百貨店まで幅広くカバーするハイブリッドな東武沿線最強のサブカードとして、ぜひ多くの方にご愛用いただければと思います。

※従来の東武カードは2026年6月末をもってサービスを終了します。
※従来の東武カードをお持ちの会員の方には2025年4月下旬から順次、カード切り替えのご案内をお届けします。同封の切り替え申込書または東武カード会員専用Webサービス内より新しいカードをお申し込みください。