堀越正巳(立正大学ラグビー部監督)

ほりこし・まさみ●1968年生まれ。熊谷工業高校時代に全国高校ラグビー大会で主将としてチームを率い、準優勝を果たす。88年早稲田大学入学、90年には日本代表に選出。早稲田大学卒業後は筑波大学大学院に進学、91年神戸製鋼所入社。神戸製鋼コベルコスティーラーズの選手としてV4~V7に貢献し、V7時には副将、翌シーズンからは主将も経験するなど活躍。98年、現役引退と同時に神戸製鋼所退社。翌99年、立正大学ラグビー部監督に就任。05年にはチームを関東大学リーグ一部昇格へ導く(一度降格し、昨シーズン復帰)。幼いころの夢は野球選手だった。身長160cm、体重65kg。

日本ラグビーを代表するスクラムハーフ(SH)だった。小柄ながら、豊富な運動量と俊敏な動き、芸術的なパスさばきでファンを魅了した。その名SHが故郷・熊谷市の立正大学ラグビー部の監督となって、もう15年が経つ。

「最近、僕が思うのは」と、45歳の監督は人懐っこい笑顔を浮かべた。

「ラグビーってすごくいいスポーツだというのを、やっと感じております。それを学生たちに伝えていかなければいけません」

試練の1年だった。6月に起きた部員の暴力騒動により、チームは自主的に1カ月、部活動を自粛した。現場指導を菊地克将ヘッドコーチに任せながらも、堀越監督はより、「心の大事さ」を学生に訴えるようになった。ディシプリン(規律)、礼儀、練習の姿勢……。

学生たちは少しずつ成長した。6季ぶりに復帰した関東大学リーグ戦1部で2勝5敗の7位となった。12月8日の1、2部入れ替え戦。立正大は関東学院大(2部2位)に27-22で逆転勝ちし、1部残留を決めた。

勝因は、キックやパス、タックルの精度だった。つまりはディシプリン。「いまはホッとしているところです」と監督は漏らした。

「勝負の肝がようやく、わかってきたのかなと思います。勝ち負けは、やはり相手のミスボールをいかにチャンスにするか、自分たちのミスをいかに小さなキズ口で埋めて、ピンチを防ぐかということですから。相手のミスに乗じてというか、ミスを見逃さず、勝利をもぎ取れました」

熊谷市出身。早大2年から日本代表に選ばれ、通算キャップ(国別代表戦出場)数は「26」を数えた。そういえば、入れ替え戦のあった熊谷ラグビー場の通路の壁には、堀越監督が寄贈した外国チームとの交換ジャージがずらりと飾られている。

モットーが『日々、新たなり』である。出典は四書の1つの「大学」。そのココロは?

「僕が日々、新たな気持ちで成長しないと、学生も成長してくれません。日々、お互いに成長するということです」

目標は来年、リーグ戦一部で上位に入り、全国大学選手権に出場することである。

「フィジカルの部分をしっかりやって、心の部分を整えていきたい。周りから愛されるチームにならないといけない。そして日本一を目指して頑張りたい。その時はやっぱり……」

続くコトバを飲み込んだ。たぶん、母校の早大、王者の帝京大を連破して、日本一になりたい、と言いたかったのだろう。

(松瀬 学=撮影)