廣瀬俊朗(ラグビー日本代表主将)
いかにもキャプテンらしいキャプテンである。率先垂範。練習で先頭を走り、試合ではタックルでからだを張る。
11月2日の東京・秩父宮ラグビー場。日本代表WTB(ウィングスリークォーターバック)の廣瀬俊朗主将はニュージーランド(NZ)代表に完敗後、スタンドの観客に向けて声を張り上げた。
「満員のお客さんにもっといいプレーを見せたかった。でも自分たちがやってきたことに間違いありません。地道に一歩一歩、積み重ねていきます」
日本代表では前任のヘッドコーチ(HC)時代、わずか1キャップ(国別試合出場数)だった。だが昨年春、代表HCに就任したエディー・ジョーンズから主将に抜擢された。東芝主将時代の統率力、人間性を評価されてのものだった。
以後、寄せ集めチームのコミュニケーションアップに努力してきた。チームソング作りを発案し、遠征中には『君が代』の練習にも取り組んでもらった。何よりも「チームの結束力」を大事にしているからだった。
日本代表は上昇気流に乗り、6月のウェールズ代表戦では金星を挙げた。自身のキャップ数も「16」まで増えた。
だが10月15日、ジョーンズHCが軽い脳梗塞で倒れた。NZ戦前、病院の同HCからメールが届いた。〈今までやってきたことを強く信じ、それをリードするんだ〉と。
試合後、廣瀬はしみじみと漏らした。
「エディーさんが苦しんでいることに対して、自分たちのプレーで勇気を与えたいと思ってプレーしました」
大阪出身の31歳。北野高校から慶大に進み、東芝に入社した。ラグビーの発展をいつも意識している。自分の務めについて、「2015年のワールドカップ(W杯)でベスト10入り、日本開催の19年W杯を成功させる」と漏らしたことがある。
「日本ラグビーの方向性は間違っていません。自分たちを信じて、ハードワークをしていくしかない」
休む間もなく、欧州遠征に出発した。173センチ、80キロ。主将として、スコットランド代表などと激闘を繰り広げた。