浅田真央(フィギュアスケート女子シングル)
悔し涙にくれたバンクーバー五輪の銀メダルから3年が経った。ひと回りたくましくなった浅田真央が、華麗かつ力強い演技でファンを魅了する。
「積み重ねですね」と、23歳の日本フィギュアスケートのエースはつぶやく。
「バンクーバーが終わってから、もう一度、修正を繰り返して、イチから直してきました。悩むほうが多かったと思いますけど、ようやく、この3年間の積み重ねが生きているんじゃないかと思っています」
バンクーバー五輪では韓国の金妍児(キム・ヨナ)に敗れた。翌シーズン、長久保裕をジャンプ専門のコーチに付けて、ジャンプの矯正に取り組む。さらに佐藤信夫コーチにも師事し、スケーティング、ジャンプの練習を続けてきた。
11年3月、東日本大震災の被災地を目の当たりにし、ショックを受けた。同年12月、最愛の母を病気で喪った。12年3月の世界選手権では6位に沈んだ。ことし3月の世界選手権では3位となった。
「ラストシーズン」と表明した今季は、序盤から好調の波に乗っている。先のグランプリ(GP)シリーズのNHK杯では自己最高点で連続優勝を果たした。ジャンプやスピン、ステップのスケート技術はもちろん、指先の動きや表情などの表現力もアップしている。
浅田のコトバにも充実感がにじむ。
「(GP開幕戦の)スケート・アメリカより、一段でも二段でも、階段を登っているなという実感があるので、着実に自分の(目標とする)レベルに近づいているなと感じています」
得意のトリプルアクセル(3回転半)はやや精度を欠いたが、フリーでは全体を通し、スピード、勢いがあった。元気だった。「守りに入らなかった」とのコトバ通り、攻めのスケーティングに徹した。
トリプルアクセルの調子がいいからだろう、フリーのプログラムで2本、入れることも考えている。「80%ぐらいは大丈夫かなと思います。でも、まだ一度も練習したことないので」と笑った。
「やっぱり、もっともっと上のレベルを目指して練習するのは楽しいですから。また、それを試合で決められたら、もっとサイコーなので。できるな、という自信はあります」
こうなると、故障でGPシリーズを欠場している金妍児との勝負が楽しみになる。12月の国際大会で復帰予定のライバルとの直接対決は来年2月のソチ五輪となるだろう。
「たくさんの注目が集まる中で、一緒に試合に出られるということは、自分にとっても、いい刺激になります。最高の舞台で、お互いに力を出し切ればいいのかな、と思います」
エースの狙いもファンの願いも、もはや「打倒! 金妍児」、そしてソチ五輪金メダルしかあるまい。