「家電メーカー」からコンテンツ王国へ変貌

2025年3月期、ソニーの営業利益は前年度比16%増の1兆4072億円と過去最高となった。ゲームや音楽、映画などの“コンテンツ事業”が収益増に大きく貢献した。ソニーは家電メーカーからコンテンツ企業へと見事に変身を遂げている。

ソニーG経営方針と24年度業績説明会。写真は、質問に答える十時裕樹 ソニーG社長CEO。=2025年5月14日、東京都港区港南
写真=日刊工業新聞/共同通信イメージズ
ソニーG経営方針と24年度業績説明会。写真は、質問に答える十時裕樹 ソニーG社長CEO。=2025年5月14日、東京都港区港南

これまでソニーは、映像系の半導体素子事業などで稼いだ資金を、主にコンテンツビジネス分野に積極的に投下してきた。その成果が現在花開いた格好だ。同社は、すでに世界有数のコンテンツ企業に成長しているといえる。次の目標は、コンテンツ企業の先輩格のウォルト・ディズニーをとらえることだろう。

そのエンジンになるのは、アニメやマンガに加えてゲーム業界の競争力だ。元々、わが国のコンテンツ産業は相応の強さを持っていた。それが、ここへきてさらに磨かれた感じだ。わが国のコンテンツ関連の輸出は、半導体を上回った。

ソニーはコンテンツ事業の成長加速もあり、金融事業の切り離しを予定している。今後、同社はよりコンテンツビジネスに傾注することになるだろう。さらに、世界的なヒット商品が生まれる可能性もあるかもしれない。これから、ソニーは新しい経営の発想を駆使して、日本経済復活のカギを握る企業の一つになってほしいものだ。

純利益2割増、揺るがぬ収益基盤を確立

昨年度の純利益は、連結ベースで前年度比18%増の1兆1416億円。金融を除くベースだと、同19%増の1兆674億円の利益を得た。一方、2025年度の業績について、営業利益は1兆2800億円の見通しだ。2024年度の金融を除くベースと比較すると0.3%の増益の見込みである。トランプ政権の政策リスクなどの影響下、本業の収益が横ばい圏で推移することは重要だ。

主要な部門ごとに見ると、ゲーム、映画、半導体事業が収益を支えている。音楽はほぼ前年並みの予想である。ゲーム分野では、世界的にゲームソフトウェア販売は増えると予想される。

音楽分野では、ストリーミング・サービスの収益が伸びる。映画分野では、有料会員数が増加する見込みだ。半導体分野では、センサーの画像処理能力向上、それによる製品ミックス改善が収益増に寄与する。ソニーはコンテンツ、半導体事業で持続的に収益を獲得する体制を確立したといえる。