成長期と転換点では、正解が逆になる

『古典で読み解く! 10年後の未来』(朝日新聞出版)の序章では、古典から「構造」を見る目を持つ意義を5つ挙げた。その第3が、「自分が今、どの局面にいるかがわかるようになる」ことだ。序章では、「成長期の打ち手と転換点の打ち手は、全く違う」とも書いた。成長期には、規模を追い、シェアを取り、先回りして投資することが正しい。転換点では、事業の定義を問い直し、資源を配分し直し、主流の外で育ち始めた芽に資源を振り向けることが正しい。どちらの打ち手も正しく、その正しさを決めるのが局面である。

会議室で割れた見立ては、実は打ち手の対立として表に出てくる。先行投資を続けるべきだという声と、新しい事業に振り向けるべきだという声。どちらの論者も、自分の見ている局面を前提に打ち手を語っている。打ち手をめぐる議論をいくら重ねても結論が出ないとき、議論すべきは打ち手より前の、局面の判定なのである。

会議をするビジネスパーソンのグループ
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産業の現在地と、自社の現在地を分けて判定する

局面を判定するとき、私が使うのは、本書の序章で整理した「構造」の8つの構成要素である。古典が描く力の動き方は、①動因、②始まり、③成長、④転換点、⑤頂点、⑥崩れ、⑦終わり、⑧反復性という8つの要素で捉えられる。経営陣との議論では、このうち②から⑤の4つを、問いの形にして使う。

②始まりの局面では、顧客がまだ何を買えばよいのかを決めかねている。製品やサービスの定義が定まらず、担い手も入れ替わる。③成長の局面では、需要が供給を追いかけ、参入が相次ぐ。④転換点では、主流の外で別の勝ち方が育ち始める。⑤頂点では、シェアも利益率も最も高く、社内で成功の物語が語られ、投資が既存の勝ち方の強化に集まる。

4つの局面は、決まった順に必ず現れる定義というより、いまを見極めるための手掛かりである。たとえば④転換点では、現在の数字が伸びていても、その数字を生んできた条件が変わり始める。転換点は、業績が鈍る前から始まっていることが多い。

この4つを、産業と自社に分けて当てる。ここが判定の要である。会議室で見立てが割れるとき、その多くは、産業の局面と自社の局面を一つの言葉で語ろうとしている。分けて問うと、見立ての違いが、何についての違いなのかが見えてくる。好調な数字を見ていた人は自社の局面を、変化を感じていた人は産業の局面を語っていた、ということも多い。「産業は転換点にあるが、自社はいま頂点にいる」という判定は、そうして見えてくる。