インド南部で進んでいた理想都市が「ゴーストシティ」になった。2014年に計画が始まった新州都「アマラーヴァティー」は、人口350万人が住む緑豊かな理想都市になるはずだった。だが、その計画は工事開始から4年後、突如中断される。一体何が起きたのか。海外メディアは、その経緯と、再開発に期待して土地を差し出した農民たちの絶望を報じている――。
建設中の「アマラーヴァティー」=2018年4月7日
写真=AFP/時事通信フォト
建設中の「アマラーヴァティー」=2018年4月7日

土地を差し出した元農民は今、警備員に

水のたまった基礎工事の穴から、錆びた鉄筋が何本も突き出している。その脇に立つ看板の完成予想図には、5棟の立派な高層ビルが並ぶが、実現の気配はない。ここには、州政府庁舎となるタワーが建つはずだった。

2022年3月、インド南部アンドラ・プラデーシュ州の新州都アマラーヴァティー。道の両側に広がるクリシュナ川沿いの肥沃な土地は、雑草と低木に覆われている。数年前までは稲が青々と育ち、バナナが茂っていた。今、閣僚や判事用の官舎が建てかけのまま放置され、あたりに人影はない。

その判事用官舎で警備員として働くK・ラビンドラ氏は、皮肉にも、州都のために土地を差し出した元農民だ。手放した一家の土地は、3エーカー(約1.2ヘクタール)に及ぶ。現在の月給は1万ルピー(約1万6600円)。「きつくても、農業のほうが実入りはよかった。今はここに座って泥棒を見張るだけだ」と、インド南部英字ニュースサイトのニュース・ミニットに語った。

インドで数十年ぶりの「ゼロからの都市」

州政府はラビンドラ氏たち農家から土地を取りまとめ、理想の新州都を造ろうとしていた。計画を主導したのは当時の州首相だ。インド経済誌のフォーブス・インディアによると、州政府は2019年の選挙までに、インフラ整備に1000億ルピー(約1660億円)超を投じた。ところが2019年、州首相は選挙で政敵に敗れる。発足した新政権は建設を止め、現場はみるみるうちに草に埋もれていった。

たしかに、2024年に再び政権が交代したのを機に、工事は再開されてはいる。2026年にはアマラーヴァティーが唯一の州都であると法律で定められた。だが、人が暮らす街の姿は、まだ見えない。

荒れ地と化す前、この土地には壮大な都市の青写真が描かれていた。一から都市を築く試みは、インドでは実に数十年ぶりとなる。

発端は2014年。この年、アンドラ・プラデーシュ州は二つに分割され、州都だったハイデラバードは新設のテランガナ州に組み込まれた。ハイデラバードを両州の共同州都にしておけるのは、10年だけと制限された。残されたアンドラ・プラデーシュ州は、新しい州都の地を探さねばならない。

州政府が選んだのが、クリシュナ川のほとりの町アマラーヴァティーだった。一帯には水に恵まれた美しい田畑地帯が広がる。商業都市ヴィジャヤワーダと農業の中心地グントゥールに挟まれたこの小さな町は、かつては仏教の一大拠点として栄え、古代には王朝の都でもあった。