性犯罪加害者の動機とは何か。『なぜあの子が性加害者になったのか』(朝日新書)を執筆した児童精神科医の宮口幸治さんは「例えば、少年院に入院してくる性加害を行った少年たちは、その多くがいじめ被害に遭っていた」という――。
部屋でうつむく若い男性
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自分に「都合のよい解釈」の危うさ

「知覚と記憶」は、知覚を通して入ってきた情報を認知・処理し、過去の経験や記憶と照らし合わせながらイメージ化し、解釈する働きを担っています。そして、その結果を「感情や動機づけ」や「行動の選択と制御」に伝達します。

この過程には、主に海馬や後部大脳新皮質が関与しているとされています。この過程に問題が生じると、性に関するさまざまな認知の歪みが形成される可能性があります。

例えば、「露出の多い服を着ているのは声をかけてほしいからだ」「女性の方から誘ってきた」「男性はそうした行為をしても許される」「別に大したことではない」といった解釈です。

そして、このような自分に都合のよい解釈が「感情や動機づけ」や「行動の選択と制御」に影響を与えると、性犯罪につながる可能性が高まります。簡単な流れを示すと、以下のようになります。

露出の多い服を着た女性がいた(知覚)

⇒誰かに声をかけてほしいのだ(歪んだ認知)
⇒自分を誘っているのだ(歪んだ認知)
⇒男性はそうした行為をしても許される、別に大したことではない(歪んだ認知)
⇒性的行為をしたい、あるいはしてもよい(感情と動機づけ)
⇒性犯罪(行動の選択)

このように、「知覚と記憶」の過程で生じる問題は認知バイアスと関連しており、その背景には生物学的要因や環境的要因が影響していると考えられています。

性犯罪のリスクになる4つの問題

そして「感情や動機づけ」、「行動の選択と制御」、「知覚と記憶」のいずれかに問題があれば、さまざまな臨床的問題を引き起こします。ITSO(性犯罪統合理論、Integrated Theory of Sexual Offending)によりますと、それらは、「感情の問題」「社会的困難さ」「認知の歪み」「逸脱した性的興奮」といったもので、それらがいったん出現すると性犯罪のリスクが上がるといいます。

実際、児童への性的虐待者やレイプ犯は、これらの4つの問題が典型的に見られるという多くの研究があります。

ただここで注意すべきは、「感情や動機づけ」、「行動の選択と制御」、「知覚と記憶」の3つの機能の問題がケースによって異なり、そのため個々が性犯罪を行う理由も異なること、そして臨床的問題も多様になり、治療ニーズも個々によって異なってくることです。

以下、これらの4つについて、臨床的な問題を実際の例と関連させてみていきます。