性犯罪者にみられる認知の歪み
認知の歪みは、それ単独で性犯罪に結びつくわけではありません。しかし、性犯罪の成立過程において非常に重要な要素であり、生物学的要因や心理学的要因、社会的要因と実際の行動とをつなぐ中心的な橋渡しの役割を担っていると言えるでしょう。
これまでの研究では、女性に対する性犯罪を行う男性には、「女性は敵対的な存在である」「女性は不誠実で、男性を欺いて自分の望みを叶えようとする」「女性は常に男性の性的欲求を受け入れる存在である」「自分は女性から拒絶されている」といった認知の歪みがみられるとされています。
また、小児性愛者には、「子どもは大人との性的関係を望んでいる」「子どもは性的な存在である」「性的な行為をしても子どもは傷つかない」「子どもは性的なシグナルを送っている」といった認知の歪みがみられるとされています。
こうした認知のもとでさまざまな状況に置かれ、さらにストレスが加わることで、不安や怒りなどの感情が生じます。そして、それらの感情を解消するために、性犯罪者にとっては適切であると認識された行動、すなわち性犯罪という反応につながるのです。
さらに、これらの認知の歪みは幼少期に形成される可能性が高いと考えられています。そのため、将来的な性犯罪を予防するためには、小児期の段階から適切な介入を行うことが重要であると言えます。
性犯罪をしない人にもある認知の歪み
ただし、ここで注意すべき点があります。それは、性犯罪を行っていないからといって、性に関する認知の歪みが存在しないとは言えないということです。
ある矯正施設のグループワークにおいて、性犯罪を行った対象者に対し、「ミニスカートをはいた女性が夜中に暗い道を一人で歩いていて性被害に遭った場合、その女性にも責任があると思うか」という問いを投げかけたことがあります。
その際、警護にあたっていた施設職員にも同じ質問をしてみました。しかし、両者の回答の間に大きな違いは感じられませんでした。むしろ、施設職員の中には、より強い認知の歪みがうかがえる回答をする人もいました。
もちろん、性犯罪者たちが本音を語っていなかった可能性は否定できません。しかし、その点を考慮したとしても、性に関する認知の歪みは、その内容や程度の違いこそあれ、多かれ少なかれ誰もがもっているものであり、それを実際の行動に移すかどうかは別の問題であると考えられます。
したがって、認知の歪みが極端であればあるほど性犯罪のリスクが比例して高まると単純に考えるよりも、生物学的要因、環境的要因、ストレスなどのさまざまな要因が重なり合うことで、たとえ軽微な認知の歪みであっても行動化につながる可能性があると捉えた方が適切でしょう。


