柴犬はニホンオオカミに近い
古くから日本に暮らしているイヌたちのことを日本犬とよびます。なかでも、北海道犬、秋田犬、柴犬、甲斐犬、紀州犬、四国犬の6犬種は、昭和初期に当時の文部省によって天然記念物に指定されており、代表的な日本犬といえるでしょう。
日本の総合研究大学院大学を中心とした研究チームは、絶滅したニホンオオカミの剝製からDNAを抽出し、ほかのオオカミやイヌと合わせて網羅的なゲノム解析を行いました。その結果、日本犬およびオセアニア再野生化犬種はニホンオオカミの遺伝情報をほかの犬種よりも多くもっていることがわかりました。日本犬はやはり、ニホンオオカミの血を色濃く受け継いでいるようです。
より広い視点でみると、ニホンオオカミのゲノムは日本犬をはじめとした古代犬種には含まれていましたが、ヨーロッパ原産犬種をはじめとした現代犬種には含まれていませんでした。さらに、ニホンオオカミは、ほかのオオカミとは異なる単一起源の独自のグループであり、かつイヌの系統ともっとも遺伝的に近縁なオオカミであることもわかりました。現在のイヌは西ユーラシアと東ユーラシアの二つの系統に大きく分かれることが知られていますが、これらの結果はイヌの東アジア起源説を支持するものです。
日本犬6種は絶滅の危機に
このように、日本犬はイヌの進化を理解するうえで欠かせない重要な存在です。しかし、国内の登録頭数はどの犬種も減り続けており、絶滅すら心配されています(図表1)。かつてニホンオオカミが絶滅した原因は、外来犬がもたらしたジステンパーなどの感染症や、人間による過剰な開発および駆除であるとされています。いまや存続の危機に瀕する日本犬はニホンオオカミと同じ道をたどるのでしょうか。その行く末は私たちの手にゆだねられています。
2010年以降、さまざまな純粋犬種の遺伝子試料を大規模に集め、その全ゲノムを網羅的に解析した研究成果がいくつか発表されました。その結果、純粋犬種は遺伝的にみると大きく二つの犬種グループに分けられることが明らかになりました。一つは遺伝的にオオカミに近い犬種が属する「古代犬種」とよばれるグループで、もう一つはヨーロッパ原産の多くの犬種が属する「現代犬種」とよばれるグループです。


