柴犬の系統は攻撃性が高め?

では、オオカミと遺伝的に近い古代犬種は怖がりで攻撃的な性格であるといえるでしょうか。

家庭で飼育されているイヌの恐怖心と攻撃性を調べるには、C-BARQとよばれる質問紙調査票が有効です。C-BARQはもともと獣医臨床の立場から家庭犬の問題行動の把握を目的として開発されたものです。そのため、見知らぬ人物への恐怖心と非社会的恐怖(大きな音や雷などの環境要因に対する恐怖)を別々の尺度で評価したり、飼い主への攻撃性と見知らぬ人物への攻撃性を分けたりするなど、イヌの恐怖心と攻撃性を細かく調べることができます。

初期の研究では古代犬種を扱ったものはあまり多くありませんが、シベリアン・ハスキーと秋田犬(アメリカン・アキタ)のC-BARQのデータがあります。ほかの代表的な現代犬種と比較した際、予想に反してシベリアン・ハスキーは恐怖心も攻撃性もかなり低いレベルにありました。一方、秋田犬はイヌに対する攻撃性のスコアがもっとも高い犬種でしたが、ほかの対象への攻撃性はそれほど高くありませんでした。

現在のイヌにみられる10の遺伝的系統
出典=『犬の性格を科学する』(集英社新書)
秋田犬
写真=iStock.com/Lunja
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また、古代犬種グループを遺伝情報にもとづいて細分化すると、北方そり犬系統(シベリアン・ハスキー、アラスカン・マラミュート、サモエドなど)、アジアスピッツ系統(秋田犬、柴犬、チャウ・チャウ、シャー・ペイなど。スピッツとはドイツ語で「尖った」という意味で、立ち耳で鼻先が尖っている犬種の呼び名です)、中東・アフリカ系統(アフガン・ハウンド、サルーキ、カナーン・ドッグ、バセンジーなど)、オセアニア系統(ディンゴ、ニューギニア・シンギング・ドッグなど)に分かれました(図表3参照)。

各系統の性格スコアをみると、アジアスピッツ系統はとくに飼い主への攻撃性が高いようです。一方、北方そり犬系統は獲物を追跡する傾向が高く、中東・アフリカ系統は興奮性と活動性が低い傾向がみられました(図表4)。

性格にも残るオオカミの名残

このように、それぞれの系統や特定の犬種によって性格に微妙に違う点はあるものの、C-BARQにもとづく大規模研究の結果は、「オオカミの名残仮説」をおおむね支持しているといえるでしょう。

古代犬種の性格の特徴
出典=『犬の性格を科学する』(集英社新書)
歯を見せている柴犬
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