※本稿は、小林拓馬『テレビのニュースはなぜ偏るのか』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。
オールドメディア批判は効いてない?
高市なんかが総理になれるわけないだろ。あんな気持ち悪いやつ。もしそうなったら、日本は終わりだ――TBS記者時代、政治部の上司が口にした言葉である。高市早苗氏は総理大臣になったが、まだ日本は終わっていない。批判対象を口汚く罵りながら、テレビのニュースを作る。報道局の日常風景だ。
マスコミの報道は偏っている。偏向報道だと叫ばれて久しい。しかし、TBSテレビで記者とディレクターを務めた経験から言えば、現場のスタッフに危機感はない。むしろ、そうやってメディアを批判する人々を「ネトウヨ」「極端な人たち」などと見下しているのが実情である。
TBSの夜のニュース番組「news23」のディレクターをしていた時、「原稿が難しすぎる」「偏差値50以下でもわかる内容にしろ」「視聴者はこのレベルのことはわからない」などと、よく上司に言われたものだ。自分たちはエリートで、視聴者は愚かな大衆という優越意識がそこにはあった。バカにしている相手から、何を言われても気にならない。それゆえ、いくら「オールドメディア」と言われてもへっちゃらなのだ。
批判的視点はジャーナリズムの基本だが…
テレビの偏向報道は、何が原因なのだろうか。私はTBSで働いている中で、先輩社員やスタッフから驚くような発言を数多く聞いた。冒頭のように高市早苗氏を指して「気持ち悪い」と言う上司や「トランプ支持者は低所得者のバカ」「トランプは認知症」などと言うスタッフがいた。信じられないかもしれないが、こういった発言が本当にスタッフルームで聞こえてくるのである。
潰瘍性大腸炎という難病を患っていた安倍晋三元総理についても「早くまたお腹壊せばいいのに」「ゲリゾウ」などと平気で揶揄する人もいた。書くのも憚られるが、安倍総理を指して「早く死ねばいいのに」と口にしたスタッフもいた。その後、安倍晋三氏は実際に凶弾に倒れ亡くなったが、そのスタッフは今どう思っているのだろうか。
こうしたテレビニュースの制作者側のモラルの低下、公正公平な報道を心がけるジャーナリズム精神の欠如が、偏向報道を招いている原因のひとつではある。

