※本稿は、小林拓馬『テレビのニュースはなぜ偏るのか』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。
「本当は自民党から出馬したかった」
報道で伝えられる政治家のイメージと、実際の姿は異なる。本稿では私が目撃してきた政治家の「素顔」を伝えつつ、いかに取材対象も偏向報道に関わっているかを明らかにしたい。
「本当は自民党から出馬したかったんだよ」と、あるベテラン野党議員は言った。初めて少人数で会食をした時のことだった。その議員は、日々の取材では「自民党の対応は看過できない」「民主主義を愚弄している」などと息巻いていたから驚いた。
「そんなことはないでしょう。今プライドを持って野党のお仕事をされているように見えますよ」と返すと、真剣な目でその議員は続けた。「本気だよ。だって自民党じゃないと政策実現できないじゃない。野党の我々が何を言っても結局は絵に描いた餅でさ。自民党の中で意見を出せば、それが実現する可能性があるんだから羨ましいよね」。
その野党議員はしみじみと語るのだった。記者に対する天邪鬼ポーズだったのかもしれないが、私には本心のように感じられた。
自民党の部会・PTは官僚も記者も本気
実際、政策議論の場は、自民党と野党ではその熱量に大きな違いがある。自民党は朝から党本部で「部会」と呼ばれる勉強会、政策議論の会合がある。朝8時台から熱心な議論が繰り広げられ、時に議論は紛糾し、怒号が飛ぶことさえある。
懸案がある部会やプロジェクトチーム(PT)は、記者も「壁耳」と言って、自民党の部屋のドアや壁に耳を押し当てて非公開の会合を取材する。中にはICレコーダーをドアの隙間に差し込み、長いイヤホンで会議の内容を聞いている記者もいるぐらいだ。やっていることは盗聴と変わりないが、なぜかこれが許されているのが自民党の伝統である。
自民党の部会で話し合われたことは、実際の政策や法案に反映される可能性が大いにあるから取材が過熱するのは無理もない。自民党の部会で議論された内容は、実際の国民生活に影響する。だからこそ出席する省庁の官僚も本気だし、取材する記者も本気なのだ。

