※本稿は、小林拓馬『テレビのニュースはなぜ偏るのか』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。
「小池vs菅」の構図はすべてカット
先輩ディレクターには「偏差値50以下でも分かる内容にしろ」とよく言われたものだ。
確かに、視聴者に分かりやすくニュースを伝えるというのは報道の使命ではあるが、一方で「視聴者を見下す」という姿勢が作り手にあることは指摘しなければならない。
ある時、小池百合子都知事が菅義偉総理に新型コロナウイルス対応に関して申し入れをしたという内容のニュースの原稿執筆を任されたことがあった。菅総理と小池都知事は「犬猿の仲」と呼ばれるほど、因縁の関係であることは、政治部記者の間ではよく知られている。原稿ではその点にも触れ、両者の微妙な人間関係が背景にあるという書き方をした。
しかし、その事実を知らない編集長には「そうなの? 聞いたことないよ。マニアックすぎるし、視聴者は興味ないよ」と、その部分はバッサリとカットされてしまった。その代わり、菅総理の不十分なコロナ対策に対して、対策を頑張っている小池都知事が苦言を呈したという内容に変えられてしまった。
有名大学出身者がつくるニュース
これは100%ウソではないものの、結果的にニュアンスが事実と異なる「偏向報道」になってしまった例である。ニュースのつくり手が「視聴者は政治家の人間関係などに興味がないはずだ」と勝手に判断し、わかりやすい対立構図を描くことを優先したために、偏りが生じてしまったのだ。
マスコミの社員は、まず100%大学を卒業している。キー局の社員であれば、それなりに学歴があり、制作会社のスタッフも有名大学を卒業している人が多い。
特にTBSは東京大学を卒業している社員が多いことで有名で、実際に私が在籍していた当時のnews23のプロデューサーと編集長は、共に東大卒だった。東大以外にも、一橋大学や慶應大学などの名の知れた大学を卒業した先輩社員が名を連ねていた。こうした経歴のテレビマンは、無意識に視聴者を見下してしまうのではないか。

