TBSの最終面接で社長が質問したこと
数あるメディアの中で、なぜTBSテレビに入社したのか。「『報道のTBS』に憧れた」とカッコつけたいところだが、正直な答えは「一番最初に内定したから」だ。就職活動をした2013年当時、TBS、テレビ朝日、日本テレビの3社が早い段階で採用試験を始めた。当然3社とも受けたが、テレビ朝日は二次面接ですぐに落ちた。TBSと日本テレビの2社の選考が進み、先に最終面接があったのがTBSだった。
最終面接では役員がずらりと並び、中央には当時の石原俊爾社長がどっしりと座っていた。ぎゅっと目を閉じていて、寝ているようにも見えた。受ける前から落第が決まっているのかと不安になりながら、ひと通り持ちネタのイスラエル留学と高卒認定の話をした。
何人かの役員とのやり取りがあった後、おもむろに石原社長が目を開いた。「君は聖書を信じるか」と社長は聞く。いきなりの宗教的な質問に面食らったが「信じます」と間髪入れずに答えた。「聖書の十戒には嘘をついてはいかんとあるだろう」社長は続ける。私は頷く。「では、お前はTBSと日テレどっちに行くんだ?」それが社長の聞きたいことだった。
「TBSに行きます」私は即答した。最終面接の後、すぐにTBSの人事部長から内定を告げられた。日本テレビには、その日のうちに選考辞退の電話を入れた。最初に受けたTBSに内定したので、最初の3社以外のテレビ局や新聞社は受けなかった。
マスコミ志望者が会社を選ぶ決め手
実は、ほとんどのテレビや新聞の社員がこのようなパターンだ。狙った会社を一本釣りできる人など、そうそういない。大学の友人や後輩の中には、共同通信・NHK・読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・日本経済新聞・中日新聞などに入社したケースがあるが、ほぼ全員が「その会社に採用されたから」働いているのであり、「数ある内定先のうちから思想的に選んだ」という人はほぼいない。
複数の会社に内定する人もいるが、政治的スタンスで入社先を選ぶ人は少ない。多くの場合は、業績や待遇が良い方の会社を選ぶ。私が入社した当時、TBSの視聴率は民放キー局ではダントツの最下位だった。そのためTBSではなく、日本テレビ・フジテレビといった他局や、電通などの広告代理店を最終的に選ぶケースもあった。
業績だけではなく、勤務地や人間関係も影響する。新聞・通信社やNHKは、若手のうちは地方での勤務が当時は通例だった。東京で勤務できる保証はない。友人の中にはNHKからも内定が出たが、地方で勤務したくないという理由で在京キー局を選んだ例もある。
テレビ局や新聞社、通信社の社員のほとんどが「受かったから」という理由で入社しているのであり、私もその一人だ。入る会社を選べる人は稀であり、選べたとしても業績、勤務地、人間関係などが選択の理由になる。社のスタンスや思想で「受験する社」を選ぶことはできても、「入社先を選ぶ」人は珍しいというのが私の体感だ。
