「政治的に偏った人」はかなり少数派
入社先を「選べない」とするならば、逆に会社の方が偏った人材を選んでいるのだろうか。私の感触では、先輩、同期、後輩を見ても、報道志望の社員に一定の政治思想的な傾向は見られない。当然、政治思想が強いなと感じる先輩もいたが、多数派がそういうわけでもない。むしろ特定の政治思想を元々持っている人はかなり少数だ。バラエティ志望だったのに、報道に配属されてそれ以来ずっと報道局で勤務していた先輩もいたくらいである。
報道局に配属された同期は、退社するまでの段階で10人いる。その10人の中で、特定の政治思想を感じた人は一人もいない。
テレビ好きで芸能界に関心が強い者。英語や中国語など語学に秀でた者。野球部、アメフト部、陸上部など大学の運動部で活躍した者。その他アニメ好き、生き物好き、アイドル好きはいたが、特定の政党と関わりがあるとか、デモに参加していたとか、政治サークルに参加していたという話題は聞いたことがない。
先輩や後輩を見渡しても、バラつきはあるが全体の話をすれば、採用に強い傾向があるようには思えなかった。
ただし、少数ではあるが強い政治思想を持っている社員は確かに存在する。いくつか私の体験を紹介したい。
政治家を「先生」と呼ぶな、という教え
2015年の入社当時は第2次安倍政権下で、集団的自衛権の行使などを容認する「安全保障関連法」(通称、安保法制)が大きな政治テーマとなっていた。政府は「平和安全法制」と銘打ったが、TBSをはじめとしたメディアでは「安保法制」と報道し、批判的な論調が渦巻いていた。安倍政権に対しては、TBS社員からも極めて厳しい目が注がれていた。
しかし、厳しい姿勢で対峙すべき相手であっても、記者の作法として政治家には一定の敬意を払うものだ。国会議員は、主権者たる国民の投票で選ばれている。政治部に入ってすぐに「相手がどんな政治家であっても、有権者の投票で選ばれた議員なのだからリスペクトするように」と教えられた。
しかし同時に「政治家と記者は対等な関係なのだから、『先生』ではなく『さん』と呼ぶように」とも念押しされた。総理は総理、大臣は大臣と肩書きで呼ぶのはよいが、「先生」は違う。
そう私に教えてくれたのは、当時官邸クラブのキャップで、現TBS政治部長の岩田夏弥氏だった。呼び方にも関係性が表れる。細かいが重要なことだ。こういった記者の矜持の多くを、岩田氏には教えてもらった。後にNHKや共同通信の「敏腕」と言われる記者が、いとも簡単に政治家を「先生」と呼ぶ姿を目にした時にはあきれたものだ。


