遊びへの好奇心は現代犬より低い
古代犬種の社交性と好奇心についてみていきます。イヌとヒトが協力関係を結ぶためには、人あたりがよく遊び好きであるというイヌ側の向社会的な性格が重要かもしれません。というのも、イヌの行動をヒト社会の要請に合わせるためにはトレーニングが必要で、イヌのトレーニングには多少なりとも遊びの要素が含まれているからです。これまでの研究結果を踏まえると、古代犬種の社交性と好奇心は現代犬種よりも低い可能性があります。
スウェーデンの研究チームは、オオカミとイヌの交雑種(オオカミ犬、チェコスロバキアン・ウルフ・ドッグ)、古代犬種(シベリアン・ハスキー、アラスカン・マラミュート)、現代犬種(ジャーマン・シェパード)の社交性や好奇心などの犬種差を行動テストにより調べました。行動テストには先に紹介したDMAが使われました。社交性は見知らぬ人物が近づいて挨拶したときのイヌの反応を、遊びへの好奇心は見知らぬ人物が布切れで引っぱりっこ遊びに誘ったときのイヌの反応をそれぞれスコア化しました。
その結果、社交性の犬種差はあまりみられませんでしたが、遊びへの好奇心は古代犬種よりもジャーマン・シェパードの方が高く、オオカミ犬がもっとも低いことがわかりました。このことから、古代犬種の遊びへの好奇心はオオカミと現代犬種の中間に位置づけられそうです。
服従性は遺伝の影響が大きい
質問紙調査でも似たような結果が得られています。最近、イヌの向社会的な性格について調べた大規模な研究成果が発表されました。この研究では約1万8000頭以上のイヌの性格データと遺伝情報の関連が解析されました。イヌの性格評価法としては、C-BARQではなく、テキサス大学の心理学者が開発したDPQ(Dog Personality Questionnaire)という質問紙調査票が使われました。
DPQはより広いイヌの性格が網羅されており、イヌの向社会的な性格を幅広く評価できます。その結果、ヒトへの社交性、活動水準、オモチャへの反応性、服従性、攻撃性、イヌへの社交性、環境への感受性、愛着を求める傾向という8つの性格特性が評価されました。遺伝情報にもとづいてそれぞれの性格特性の遺伝率を推定したところ、ヒトへの社交性、オモチャへの反応性、そしてヒトの指示への服従性の遺伝率は約30%以上という高い値を示しました。この結果は、ヒトとの協力的な関係構築に欠かせない性格特性にはほかの性格よりも遺伝の影響が大きいことを示唆しています。

