既視感のある出来事

コメの在庫が積み上がっているとして、JA農協は収穫時に農家に仮払いする26年産米の概算金(玄米60kg)を前年より3~4割引き下げた。これで農家が離農するとコメが食べられなくなるとも報道されている。

これは私にとってはデジャブである。2007年過剰を予想し概算金を1万2000円から7000円に一気に引き下げたJA農協は、政府に34万トンを備蓄米として買い入れさせ、米価の底上げを行った。さらに、約1600億円だった減反補助金を補正予算で500億円上積みさせ、翌年の減反を10万ha強化して、110万haとした。米価維持のために備蓄米の買い入れを使うのは、古くからの常套手段だ。JA農協による概算金の引下げ、政府による備蓄米買い入れは、今回と全く同じパターンだ。

30kgの紙袋で保管される政府備蓄米
30kgの紙袋で保管される政府備蓄米(写真=農林水産省/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

ところで、概算金が前年より4割安くなることで、コメ農家の経営が廃業せざるをえないほど悪化するのだろうか。これが、この問題の核心である。本来、これを立証しなければならないのは納税者の負担で備蓄米の買い入れを実行しようとする農水省とJA農協だ。しかし、だれも問題視しようとしないため、かれらは立証責任を免れている。これが否定されれば、今回の政府の買い入れは全く根拠のない政策となる。

コメ高騰で拡大した価格差

そもそも概算金を“暴落”させたのは、JA農協である。

JA農協は信用・共済事業で利益を上げているし、コメ事業自体でもこの2年間大きなマージンを手にしてきた。組合員農家のための組織が、どうして組合員を苦しめるような行為をするのだろうか。

シンプルなファクツを示す。

概算金は、JAなどの集荷業者がコメの販売前に生産者へ支払う仮払金である。販売代金の確定後、販売手数料や運送・保管・検査費などを差し引き、追加払いを含む最終精算が行われる。米価や概算金は産地や品種によってまちまちである。

以下は、農水省が公表情報を基に作成した各段階の流通価格のイメージである。2025年産の概算金2万8200円は、77事業者から報告された金額の単純平均である。

【図表】米の各段階の流通価格(R5年産~7年産)
相対取引価格から概算金を引いた差額がJAの販売手数料、運送・保管・検査費などのマージンである(出典=農水省HPより)

相対取引価格は23年産1万5300円、24年産2万4800円、25年産3万6900円。概算金は23年1万2700円、24年1万9100円、25年2万8200円。両者の差額(図表1)は、23年2600円、24年5700円、25年8700円へと拡大している。私は、この差額の拡大によってJA農協が収益を増やしている部分はあるとみる。