決してクマが悪いわけではないさ

原田を襲ったヒグマは、事故の翌日に、息絶えた状態で発見された。体長1.5メートル、体重160キロの大きなメスだった。このクマが原田を襲った理由も判明した。体内には、横腹から入った銃弾が残っていた。原田が使用していた弾ではない。

実は前日、このクマは別のハンターによって重傷を負わされていた。ハンターは犬を連れていたにもかかわらず、きちんとクマの匂いを追わせてとどめを刺すことをしなかった。原田は、他人のずさんな狩猟のとばっちりを受けたのだった。

黒田未来雄『羆追人たち』(山と溪谷社)
黒田未来雄『羆追人たち』(山と溪谷社)

通常、弾が貫通すればクマは出血多量で命を落とす。しかしそうではなかったため、撃たれた翌日になってもまだ死にきれない。

「苦しかっただろうなあ」

原田はヒグマの気持ちに寄り添う。さらに、そのメスは子連れだった。原田が気づかないままに子グマに接近してしまい、母グマの防衛本能にスイッチを入れてしまった可能性もある。

「運悪く、ちょうどそこに現れたのが俺だった。自分を撃った人間に反撃するため、そして我が子を守ろうとする一心で攻撃してきたんだろうな。悪いのは前日にそいつを撃ったハンター。決してクマが悪いわけではないさ」

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