街を育てれば商売も繁盛する

漁師が海を豊かにするために、しばしば植樹活動に取り組むことは知られている。森の栄養分は川から海へと流れ、魚介類の餌となるプランクトンの増加をうながす。そのため、漁師たちが山に木を植えることによって漁獲高が増えるのである。

老祥記のビジネスモデルにも、これと似たところがある。街を大勢の人が訪れ、滞在することが、老祥記の繁盛の背景にはある。南京街のエコシステム(生態系)に老祥記は向き合ってきた。阪神淡路大震災やコロナ禍など、数々の困難な時期もあったが、それらを乗り越えて今も行列は続く。

3代目の英生以降の老祥記は、この街のエコシステムを理解し、商店街振興組合などの活動にも熱心に取り組むようになっていく。3代目の英生、そして4代目の祐仁はイベントや街づくりの実行部隊の中核としての役割を担い、引き継ごうとしている。

イベントや企画で街ぐるみの集客

南京町では、旧暦の正月を祝う春節祭に加え、中秋の名月を楽しむ中秋節なども開催されるようになった。竜龍舞や獅子舞、中国音楽や中国舞踊が披露され、多くの来場者が集まる。神戸市内の有名豚まん店が発起人となってはじまった「KOBE豚まんサミット」にも、老祥記は第1回から参加している。地域の人気店が互いに手を組むことで話題を呼び、街に足を運ぶ人がさらに増えるという好循環が実現している。

老祥記が老祥記であるのは、100年を超えて家族が守り受け継いできた、麹という小さな命のおかげである。そして老祥記もまた、神戸の南京町という街に支えられ、同時に集客力のある人気店の一つとして街のにぎわいを支えてもいる。

小さな高収益企業と地域が織りなす、貴重なエコシステム――。老祥記に毎日できる行列は、それが息づいていることの証である。

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