イノベーション企業が気付いた小さな「異変」

積水化学工業は、化学製品分野で日本を代表するメーカーのひとつである。その事業の主軸は、プラスチックの成形加工である。積水化学工業の2024年3月期決算の売上は1兆2,565億円、経常利益は1,059億円となっており、いずれも過去最高である。売上額でみれば10年前と比較して1割強の増加と、劇的な成長とまではいえないが、しっかりとポジションを保ちながら、前進を続けている。

積水化学工業大阪本社
積水化学工業大阪本社(写真=アラツク/CC-BY-SA-4.0,3.0,2.5,2.0,1.0/Wikimedia Commons

積水化学工業が優れた成果をあげ続けているのは、イノベーションが組織の仕組みの問題でもあることを見逃さず、その改革を怠らなかったからである。近年においては、2010年代に入るころ、同社のイノベーションの制度とマネジメントに重要な改革が行われた。

このころ同社は、自社の売上げのなかで新製品が占める比率が低下していることに気づいた。日本初/世界初の新製品を世の中に送り出し続けることで、各種の社会課題の解決に貢献してきたイノベーション企業としては、由々しき事態である。この問題の解決には、熾烈さを増す国際的な開発競争への対応とともに、加速する市場の変化に開発プロジェクトを適合させていくことが必要だった。

そこで生み出された「K値」という指標と、それを活用した制度及びマネジメントによって、積水化学工業は自社の開発の仕組みの高度化を実現し、それがペロブスカイト太陽電池のような競争力のある新製品の開発にもつながっている。

積水化学工業の加藤敬太社長にお話をうかがった。