「主権の存する日本国民の総意に基く」

政府が提出した皇室典範改正案が7月10日の衆院議院運営委員会で、自民、日本維新の会、中道改革連合、国民民主、参政党などの賛成で可決され、続く衆院本会議を通過した。参院では特別委員会で審議され、今特別国会で成立する公算だが、この内容では皇室関係者のどなたも幸せにならないのではないか。

ベルギー南部ナミュールで記者団の取材に応じられる天皇陛下=2026年6月24日
写真提供=共同通信社
ベルギー南部ナミュールで記者団の取材に応じられる天皇陛下=2026年6月24日

皇室典範改正案は、戦後に皇籍を離れた旧11宮家の男系男子を養子として皇族に迎えるだけでなく、その養子に生まれた男子には皇位継承資格を与えると踏み込んでいる。場合によっては、600年の歴史を経て「接ぎ木」するように、一般国民である養子の系統(旧伏見宮系)が、現在の天皇家に取って代わって皇位を引き継ぐというおかしな制度設計だ。

典範改正案は、女性皇族が結婚後も皇室に残ることができるが、夫と子については皇族としないという。家族の一体感を無視している。女性皇族は、皇統譜に登録されたまま、自治体に住民登録される。選挙権などは付与されず、戸籍もない境遇で、公務をこなすという役割を強いられることになる。女性皇族への敬意はかけらもないではないか。

男系維持に拘るあまり、女性・女系天皇を容認する国民世論と乖離があるだけでなく、皇位継承をめぐる議論を先送りした「立法府の総意」からも逸脱している。

理解できないのは、象徴天皇制の核心である皇位継承資格に変更を加える大改正だというのに、高市早苗政権が典範改正案を拙速に成立させようとしていることだ。

憲法は、天皇の地位を「主権の存する日本国民の総意に基く」(1条)とし、「皇位は、世襲のもの」(2条)と定めている。国会は「国民の理解」を得ながら、真摯に審議することが必要だったのではないか。