「国民の理解が得られることを望む」
天皇家は、この議論の流れをどう受け止めておられるのか。天皇陛下は6月11日、オランダ・ベルギー訪問を前にした記者会見で、皇族数確保策をめぐる議論について「国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」と表明された。
衆参両院の正副議長が前日の10日に「立法府の総意」として、旧宮家養子案や女性皇族案を打ち出した直後だった。
天皇陛下は、それまでの記者会見で、皇族数減少について問われても「制度に関わる事柄への言及は控えたい」という慎重な姿勢を徹底されていたため、永田町やメディアには異例の発言と受け止められた。
背景にあるのが、上皇陛下のご意向だろう。05年12月の記者会見では、有識者会議の結論に直接触れず、「皇室の中で女性が果たしてきた役割については私は有形無形に大き
宮内庁長官を12年まで7年間務めた羽毛田信吾氏は、7月9日の共同通信の取材に、現行の皇室典範は「二つの構造的な欠陥がある」との認識を示す。皇位継承を男系男子に限る1条と、女性皇族が結婚により皇室を離れるとする12条の規定を指し、1条について「これだけでは将来、皇室が絶える危険性が高い」とし、12条は「皇族数が減り、皇室活動に支障をきたす」と指摘している。
皇室と親交がある自民党国会議員の一人は、上皇陛下のお気持ちについて「旧宮家が養子として皇室に復帰するのは、お嫌だろう。戦前、力のある宮家(秩父宮=昭和天皇の弟)が軍部の一部と結んで戦争に突き進んだ、という過去があるからだ」と推察する。
こうした見方が的を射ているのかは、今後、養子縁組の養親に皇族が名乗りを上げるかどうかで判明するだろう。
「あきらめずに『種火』を生かしたい」
7月10日の衆院議運委では、養子の子が男性なら皇位継承権を持つことの是非などが審議された。木原稔官房長官は「養子の皇族男子の子孫は生まれながらの皇族であり、皇位継承資格を有する。実方の系統によるとの解釈は、創設的な規定ではない」との説明に終始した。
中道改革連合の中野洋昌幹事長代行が「17年に成立した(天皇陛下の)退位特例法の付帯決議に安定的な皇位継承の確保策や女性宮家の創設の検討などが入っていた。検討する必要があるのではないか」と質したのに対し、木原氏は「立法府での将来の検討を先取りするものではなく、縛る趣旨のものでもない」と繰り返しただけにとどまった。
同委では「改正後の皇室典範等による皇族数の確保の状況を踏まえ、安定的な皇位継承を確保するための方策について、引き続き、検討するものとする」などとする付帯決議も採択された。
中道改革は、養子の子孫への皇位継承資格付与の是非について速やかに検討する内容を付帯決議に盛り込むよう求め、改正案への賛否を保留していたが、橘幸信衆院法制局特別参与が中道改革の主張は見直しの「検討対象になり得る」と答弁したことから、最終的に賛成に回った。
中道改革の野田佳彦元首相は10日、典範改正案に賛成票を投じつつ、「私にとっては敗北だ」と記者団に語った。女性宮家の創設などを訴えていただけに「至極残念な結果だ。でも、まだこれからも諦めずに『種火』を生かしていきたい」と議論再開に意欲を示した。
一連の政治の動きから浮かび上がるのは、皇室典範改正案が成立することで、天皇家をはじめとする皇族や養子皇族関係者を含め、幸せになる方、心がざわつかない方がおられるのだろうか、という疑問である。


