「天皇になったら結婚する人もいない」
皇統の危機は、秋篠宮さまの長男の悠仁さまが結婚し、男子が生まれないと、今の天皇家の皇統が途絶えるところにある。
天皇制を長年支えてきた側室制度は戦後に廃され、妃や側室の候補を輩出してきた華族制度(1884~1947年)を基にした学習院OGらによるネットワークもなくなり、一般国民(平民)との自由婚の時代になっている。
悠仁さまはお相手を見つけることにも苦労されるだろう。
こうした皇族の結婚の難しさを予見するかのような発言が、男系維持派の自民党重鎮から飛び出した。党憲法改正実現本部長の中曽根弘文元外相が6月28日、富山県高岡市での党会合で講演し、愛子さまへの皇位継承は「あり得ない」としたうえで、「天皇になったら結婚する人もいない」と述べたのだ。女性天皇を否定するだけでなく、愛子さまを無用に傷つける発言だった。
中曽根氏は翌29日、国会内で記者団に「言葉が適切ではなかった」「世間から注目されており、個人的な心配を述べた。愛子さまの幸せな人生は当然願っている」と釈明する羽目になった。
だが、男女を問わず、皇族の一般人との結婚へのハードルが年々上がってきていることも事実だ。
典範改正案に示されたのは、そのいざという場合に備えて、一般人として生まれ育った旧宮家の男性が、皇族の養子となって一般女性と結婚し、生まれてくる男子が天皇になり得る、というバックアップ体制を作るものだ。
仮に男子が生まれなければ、また養子を取ることも想定されている。だが、皇室と国民の一体感がどんどん失われていくだろう。
「だまし討ちのように政府は提示した」
養子の子が男子なら皇位継承権を持つのは「立法府の総意」になかった話でもある。
政府が6月25日に衆参両院の全体会議で示した改正案要綱には、養子皇族の子孫について「皇族としての地位は実方(旧宮家)の系統による」と記された。社民党の福島瑞穂参院議員が「養子の子が皇位継承権を持つことまで含むのか」と確認を求めたが、山崎重孝内閣官房参与は「現在の皇室典範の解釈通りになっていく」と答えるだけで、敢えてその意図を明確にはしなかった。
政府が翌26日の自民党部会に示した典範改正案全文に、養子の子孫は具体的な継承順位を定める現行典範2条の適用対象だと明記されたことに、驚いた向きも少なくない。立憲民主党の水岡俊一代表が6月29日の記者会見で「これまで何ら議論していないことをだまし討ちのように提示する政府・与党に怒りを禁じ得ない」と批判したのは、こうした背景がある。
改正案は、養子候補の範囲を1947年に皇籍を離脱した旧11宮家に限定する。未婚の男系男子を抱えるのは、賀陽、久邇、東久邇、竹田の4家だ。この中に15~30歳の対象者は少なくとも6人いる、と7月12日の日本テレビで報じられている。
宮内庁は「今上陛下とは36親等から38親等の隔たりがある」(緒方禎己次長)という。天皇家と共通の男系の祖先は、室町時代の崇光天皇まで600年以上も遡るのだから、「赤の他人」というレベルだろう。
一般人の子孫が皇位継承資格を持つのは、これまでの皇室の先例や伝統にはなかったことだ。宮内庁も「誕生時に皇族ではなかった方が、皇族の養子となって皇族になった事例はない」(緒方次長)と、6月12日の衆院内閣委員会で解説している。
しかも、旧宮家に限って養子縁組による皇位継承権を認めるなら、憲法14条にある「社会的身分又は門地により、差別されない」との規定に抵触するのではないか、との疑念は根強い。今後、違憲訴訟が起こされる可能性もゼロではないだろう。

