「国民の理解と支持、安定性、伝統」
皇室典範改正案が6月30日に閣議決定されたのを受け、所功京都産業大名誉教授が時事通信の取材に対し、こう語っている。
「皇室が今の天皇と皇族から、養子という形で接ぎ木された傍系関係者に移り変わる可能性があることを意味する」
「あくまで仮定だが、悠仁さまが将来結婚後も男子を授からなければ、周囲の圧力で養子を迎えさせられるような事態も懸念される」
「男系男子限定は明治の旧皇室典範制定からであり、そこに固執し続ければ皇室の存続を危うくする」
皇位継承問題の本質を突くコメントだが、高市首相や麻生太郎自民党副総裁らは聞く耳を持たず、男系維持の養子案にまっしぐらだ。
明治時代に伊藤博文らによって定められた旧皇室典範で、天皇と皇族の養子を禁止したのは「宗系の紊乱(血統の乱れ)」を避けるためだった。養子を認めると、時の天皇や内閣、軍部などの政治権力の恣意や思惑によって血筋の遠い人物を皇嗣に据えることが可能になることから、これを防ぐためにも、皇位は男系の直系から血縁の濃い順で機械的に決まるというルールを作ったのだといわれる。
2005年の小泉純一郎首相の私的諮問機関だった有識者会議は、女子・女系天皇を容認する報告書をまとめ、「男系による継承を貫こうとすることは、最も基本的な伝統としての世襲そのものを危うくする」と明記した。
旧宮家の男系男子やその子孫を皇室に迎えることについては「国民の理解と支持、安定性、伝統のいずれの視点から見ても問題点があり、採用することは極めて困難」と否定しているのである。
05年報告書には、数学の確率論も援用された。「男子・女子の出生比率を半分とすると、平均的には、一組の夫婦からの出生数が2人を下回れば、男系男子の数は世代を追うごとに減少し続けることとなる」とし、養子をいくら取ってつないでも、数世代後の近い将来に男系男子が途絶えることが見通されている。
「皇室が続くのなら女性天皇でもよい」
高市政権は、この05年報告書を無視しているが、議論をこの時点に戻す必要がある。
現行の皇室典範は1条で「皇位は皇統に属する男系男子が継承する」と定め、2条で継承順位を「皇長子(天皇の長男=不在)」から「皇兄弟(秋篠宮さま)及びその子孫(悠仁さま)」「皇伯叔父(常陸宮さま)及びその子孫」まで列挙している。
典範改正案は、養子の男子孫に2条を適用するが、明治の先人たちが回避してきた人為的に皇族を作り出すもので、「宗系の紊乱」を引き起こすことにもつながりかねない。
笠原英彦慶大名誉教授は、7月3日の読売新聞に対し、「皇位の原則は世襲」という立場から、「養子と養親それぞれの合意で縁組を決めるとしているが、周囲の影響を完全に排除できるものではない。皇位継承ルールに人間の意思を介在させる養子制度には無理がある」と指摘している。
旧宮家関係者からも養子縁組案を疑問視する声が上がる。3歳で皇室を離脱した、旧宮家の久邇朝宏氏は「15歳以上までずっと自由に生きてきた人が、これから社会に出ようという段階になって、わざわざ皇室の厳しい制約を受けるのか」「自ら手を挙げて養子として皇族になる方がいるのは疑問だ」「皇室が続くのなら女性天皇でもよい」などと複数のメディアに語っている。

