ライバル候補や野党議員を標的に
政権の正統性が問われよう。高市早苗首相の公設秘書が、先の自民党総裁選や衆院選でライバル候補や野党議員を標的にした、中傷動画の作成を知人に依頼し、SNSで大量に拡散させていた疑惑が、週刊文春(電子版を含む)に4月29日から7週にわたって報じられ、他のメディアも追随している。
高市首相は、特別国会で野党から疑惑を追及され、主観的に事実関係を否定したり、論理をすり替えたり、答弁内容が揺れている。首相官邸に信頼できるチームを作れず、独りで問題を抱え込み、結果的に必ずしも正しくない判断を下しているのが実情だ。
より深刻なのは、高市首相が、自ら置かれた立場を理解できず、危機管理の観点から程遠い、場当たり的な答弁を重ね、自らを窮地に追い込んでいることだろう。
各種世論調査で、内閣支持率が下落傾向に入っている。折しも、特別国会では、与野党間で民主主義の根幹である選挙の公正を守るためのSNS規制をめぐる議論が進められている。その最中に浮上した疑惑である。首相はどこまでそれを晴らすことができるのか。
「私自身も秘書も面識のない方だ」
週刊文春や共同通信などの報道によると、2025年9月の自民党総裁選の最中、首相の公設第一秘書の木下剛志氏からSNS戦略を相談された、IT会社代表の松井健氏が「ネガティブな動画」を提案し、AIを使って対立候補の小泉進次郎防衛相(農相=当時)を中傷する動画を1日100本以上作成し、SNSに投稿・拡散したというのだ。小泉氏の写真やイメージカットとともに、「カンペで炎上!」「世襲の操り人形」などと字幕が流されたという。林芳正総務相(官房長官=当時)も、攻撃の対象に加えられている。
2月の衆院選では中道改革連合の枝野幸男元官房長官、岡田克也元外相らが標的となった中傷動画が作成・拡散されている。
高市首相が初めて中傷動画疑惑に言及したのは、5月8日の参院本会議だった。立憲民主党の小島智子氏が週刊文春報道の真偽を質したのに対し、「事務所の職員に確認したが、他候補のネガティブな情報の発信は一切行っていない」と否定した。この完全否定答弁が起点になる。
![日伊首脳会談を終え、先進7カ国首脳会議(G7サミット)に出席するため、イタリア・ローマ郊外のレオナルド・ダビンチ国際空港(フィウミチーノ空港)を出発する高市早苗首相(左)=2026年6月15日[代表撮影]](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/3/670wm/img_c35a22334dc43855a73a7d033ca02b99490838.jpg)
