6月5日の参院予算委では、木下秘書が週刊現代に松井氏とオンラインでの接点があることを認める回答書を送っていた問題も質された。驚いたことに、首相は「内容が事実と違うと聞いた」と述べ、高市事務所が出した回答自体を否定したのだ。
首相は、5日後の衆院法務委員会で「秘書の勘違いだった」と訂正に追い込まれる。
「自分の声に似ているように思うが」
高市首相は、木下秘書と松井氏の面識を頑なに否定してきたが、6月7日、局面が大きく変わる。松井氏が共同通信のオンライン取材に応じ、木下秘書から25年9月に総裁選で「小泉氏を逆転するにはどうすればいいか」と相談を受け、「ネガティブな動画が効果的」と応じ、AIによって大量の動画を作成したうえで、投稿・拡散した、と証言したのだ。
協議した相手の携帯電話の番号が木下秘書のものと確認された、とも報じられた。
共同通信に対し、松井氏は、木下秘書から衆院選でも「中道改革連合を批判し、大物候補者をたたいてほしいと依頼を受けた」と明らかにした。松井氏は、与野党50人から依頼があり、20人のリクエストに応じたという。動画を1万本作成し、1000万円以上かかったが、全て無償で請け負い、広告収入も得ていない、と語っている。
松井氏の証言の真偽も検証する必要があるだろう。
首相は翌8日、松井氏の証言について記者団に問われ、直接答えずに「他の候補者を誹謗したり、中傷したりは私の流儀ではないので決してやっていない」「ましてや、第三者に依頼することは決してない」と、改めて強く否定した。
ただ、松井氏と木下秘書の「面識」について記者団に改めて問われると、「実際にお会いして名刺交換して、相手の所属や氏名を承知していることはない」と説明し直した。
6月10日の衆院法務委員会で、中道改革連合の西村智奈美氏が文春公開音声の本人確認を求めたのに対し、首相は「(本人から)自分の声に似ているように思うが、編集されて発言が細切れになっていることなどから、内容も含め確信は持てない、との返答だった」と明らかにした。木下秘書が松井氏らとのオンライン会議に参加した事実を、この時点でようやく認めたのである。
「党の名誉にかけて、やるのが大事だ」
「面識はない」「秘書を信じる」という当初の首相答弁は、1か月の間に「お会いしたことはない」「違和感がある」を経て、「自分の声に似ている」にたどり着いた。
この間、週刊文春や共同通信の動画疑惑報道が当事者の証言だけでなく、音声記録などの物証を開示しているのに対し、首相は、事務所のパソコンの記録を確認させたこと以外は木下秘書の言い分を間接的に伝えただけで、有効な弁明・反論ができていない。

